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「犬の肉球ブログ(連載中)」
【桃子編】 一 たまごの夏

犬の肉球ブログ 桃子編一 たまごの夏 第一話・その二

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一 たまごの夏 第一話・その二

「なあ桃子、あんたの希望、敷居が高すぎるって自覚してるか?」
 亜衣は呆れてそう言った。昨夜のことだ。
「わかってるよお、そんなこと。でも初めから妥協してたらいい仕事見つかんないもん」
「特殊技能や資格もない上に、高い時給と短時間労働ねえ・・・・。家庭教師とかなら多少情報持ってるけど、やる自信あるか?」
「ないない。私にできると思う?」
「一応訊いてみただけ。あんたの短大じゃ看板には不足だし、しかも近頃は全然通ってないだろ」
「さすがに亜衣ちゃんはよくご存知で」
「そうすると、今すぐ紹介できるのは、あとは水商売とか風俗くらいになるな」
「それはイヤ!」
「そう言うと思ったよ。まったく、そんなに神経質にならなくても、もっと気楽に考えればいいのに」
「もうキャバクラは懲り懲り。知らない男に体を触られるのも絶対にイヤ。風俗はもっとありえないよ。いつ、誰が見てるかわかったもんじゃないもの。スキャンダルはご法度なの」
「スキャンダルねえ・・・・なら、今速攻で紹介できる仕事は――なし、だな」
「そんなあ、なんとかしてよお」
 駄々っ子のようにせがむ桃子に、半ばうんざりした顔の亜衣は、少し投げやり気味な口調で言った。
「・・・・じゃあ、ライブチャットとかは? あんたパソコンは使えたよね」
「なあにそれ?」
「まあ、あんたの嫌いなエッチ系だから無理だろうけどね――」

 パソコンでのチャットだから、脱ぐことはあっても直接男に触られるわけではない。カメラを設置して自分の姿を相手に見せることになるが、顔を出すかどうかは自由に判断できるから、匿名性は維持できる。音声も嫌ならカットすればいい――。
 本気で勧めている訳でもないので、かなりいい加減で大雑把だった亜衣の説明を聞いても、初めのうちは少しも興味は湧かなかった。パソコンを隔てて女と話して、女を脱がして何が嬉しいのだろう。それで満足できるのだろうか。男ってやつは自分の理解を超えた性欲の塊だ。気色悪い。そんな感想しか浮かばなかった。
 しかし、一つだけ桃子の食指を動かす情報があった。時間は完全に自由、しかも在宅でできる、という点だ。

 桃子は亜衣がログインしていないか、探してみた。勿論亜衣も本名で出ているわけではない。パ、だか、ピ何とかという名前だと言っていた。今表示されているハンドルネームにPが含まれる名は見当たらない。念のためリロードしたら、女の子が十人に増えたが、亜衣らしい人はいなかった。

 仕方ないので、適当に一人選んで無料待機画面を表示してみた。男が入ってくるのを待っている子の様子がライブで見られるはずだ。
 出てきたのはヒラヒラのフリフリなキャミを着た女の子の上半身。
 ・・・・やっぱりこういう格好するのか。
 たちまち桃子のテンションが急降下を始めた。

 もう一人別の子の待機画面を見てみる。今度は黒い下着姿で、顔もモロ出し。さらにもう一人を見ると、セーラー服でM字開脚、パンツモロ見え。気分が萎えてくるのを我慢して、さらにもう一人を表示すると、オレンジのTシャツ姿で、少しぽっちゃりした感じの子が出てきた。顔は下半分だけが辛うじて見える。
 おお、ようやく安心して見られそうなのを見つけた、と思ったのも束の間、その子は全身をくねりながら、両手で自分の胸をゆっくりと揉みしだき、舌の先端でいやらしく唇を舐めまわしていた。
 桃子は目前で繰り広げられるセクシーアピールを見たまま固まってしまった。

 やっぱダメかなあ、と半分諦めかけたところで、突然オレンジの子が画面から消えて、替わりに「チャット中」の文字が大きく表示された。たった今、誰かがこの子とチャットを始めたのだ。

 一体、ここでは実際にどんなことが行なわれているのだろうか。少しだけ興味もあった。自分がやる、やらないを――いや、むしろやる気はまるでないのだが――できるだけ実態を知った上で判断した方がいい。そう思うと、この「チャット中」の向こう側を見てみたくなる。ほんのちょっとでいい、参考程度に。

 画面の隅に「新規ポイント購入」のメニューとともに、こう書いてあった。
『新規お試し価格! 今なら一〇〇円でヌキ放題!』
 調べてみると、新規ユーザー登録するとサービスで最初だけ一ドルで十ポイント貰えるらしい。通常価格では十ポイントで二十ドル。めっぽう高い。
 サイトの説明によると、十ポイントあれば、十分間チャットできるらしい。それで百円程度なら構わないだろう。桃子は意を決して登録画面に進んだ。支払いはカード決済で、名義や番号を入力することに抵抗感を覚えたが、亜衣が登録しているサイトだから悪質業者ではないだろうと信じることにした。亜衣の情報は多少偏りはあるものの、信頼はできる。
「私、レズだと思われちゃうかなあ」
 最近独り言が多くなった桃子は、TOUKO KIMURA、と自身の名義を入力しながら呟く。データを送信して、手続き完了のメールを待ってからログイン。登録に七~八分かかった。

 再びオンライン中の女の子のリストを表示させた。チャット中なのは、さっきのオレンジの女の子一人だけだったが、チャット人数が六人に増えていた。メニューには、女の子とリアルタイムでコミュニケーションがとれる「チャットモード」と、ただ女の子の様子を見るだけの「覗きモード」があった。持ち時間は十分しかないから、まともに相手と話をしているヒマはない。誰かとチャット中のところを覗く方がいい。しかも今、オレンジの子に男が六人集まっているのなら、それなりに「いいところ」である可能性も高い。チャンスだ。

「いぃやあああーっ!」
 覗きのメニューをクリックした桃子の目に飛び込んできたのは、画面いっぱいどアップの巨大***。しかもそこにはバイブが挿し入れられ、オレンジの女の子は自分でそれを激しく動かしながら大声で喘いでいた。
「む、無理無理! 私、絶対無理だって!」
 慌ててパソコンを勢いよく閉じた。

 見た。見てしまった。
 すごかった。
 時間にしてほんの数秒だったはずだが、桃子の脳裏にはたった今見た光景がくっきりと焼きついてしまった。
 話をするだけの場合もあるが、大抵は脱いだり、オナニーすることを男は要求してくる、ということは亜衣から聞いていた。目の前に人がいるわけではないからすぐに慣れる、とも言っていたので、その覚悟はしていたつもりだった。だが、いざその現場を見た感想は――だめだ、冗談じゃない――だった。
 やっぱり別の仕事を探そうか、桃子は思ったが、具体的にこれという仕事が思いつかない。亜衣から他の仕事は紹介してもらっていない。本屋に行って情報誌でも買えばいいのかもしれないが、今は暑いから外出したくない。
 でも、急いで何か見つけないと、このマンションに住み続けることも出来なくなってしまう。

 背に腹は替えられぬ、という言葉もある。本当に困ったら一時しのぎにやる、ということも、あながち否定できないくらいの可能性はある。それが現実。
 桃子は小さなため息をついて、頭を軽くぽりぽり掻きながら、傍らにあったアイスコーヒーで口を濡らした。それから心の中でゆっくりと、いち、にの、さん、と数えて、一気にノートパソコンを開いた。

 画面ではまだオレンジの女の子のオナニーが続いていた。たちまち桃子の眉間に皺が刻まれようとした瞬間、いきなり映像が途切れてしまった。
「あ・・・・しまった」
 今までずっと繋ぎっ放しだったことにようやく気がついた。新規お試しの十ポイントをもう使い果たしてしまった。もったいない、と思うと同時に、せっかく出しかけたやる気も全て消え失せてしまった。

 自分には合わない仕事もある。これは仕方のないことだ。よく考えてみれば、おとといクビになった仕事も今のチャットも、男の機嫌をとったり、男の言いなりになったりする点では同じだ。そういう類の仕事は自分に向かない。どうして男に媚を売らなければならないのか。何か、自分がひどく安っぽくなったような気になる。そういうのはだめだ。むしろ自分の夢はその逆のはずだ。
 思い出せ、何のために上京してきたか。見下してやるためだろう。あいつと、あいつのようなしょぼい男どもを。いつか私の目の前に跪かせてやるのだ。
 以上のような言い訳を考え出して、桃子はようやくライブチャットを諦めるという結論に達した。

(第二話につづく)




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