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「犬の肉球ブログ(連載中)」
【桃子編】 一 たまごの夏

犬の肉球ブログ 桃子編一 たまごの夏 第三話・その二

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一 たまごの夏 第三話・その二

「――で、どうだった?」
「え?」
 周囲をぼーっと眺めていた桃子は、亜衣に何を訊かれたかわからなかった。
「バイト。サイト見たんでしょ。やっぱりダメだろ?」
 成美と美沙の前でしたい会話ではないが、訊かれたら答えるしかない。亜衣は人前でもずけずけと桃子の私生活に関わることを話す。そのデリカシーのなさが桃子には悩みの種だ。亜衣に悪気はなく、彼女は彼女なりに話題を選んではいるようだが、お陰で成美と美沙には桃子の内情が筒抜けだ。キャバクラのクビは勿論、生活が危ないことも知っている。仕方なく、桃子は手短にライブチャットはやらないことを告げた。

「えー、なんすか、それ?」もうすぐバイトを辞める予定の美沙が話題に跳びつく。
「あんたには、あまり関係ないな」と亜衣はいなすが、美沙は一度喰いついたら離れない。仕方なく亜衣は簡単にライブチャットの説明をした。
 美沙は好奇心に満ち溢れた眼差しで聞き入っている。成美は苦笑いしている。成美もこの方面の話題はあまり得意ではない。

 美沙の質問攻めにあっている亜衣を尻目に、成美は小声で桃子に話しかけた。
「それで、桃子ちゃんこれからどうするの?」
「近場で適当なバイト探そうと思って」
「マンションは? 家賃払えるの?」
「引っ越すかもしれない」
 成美は心配そうな顔で頷いた。桃子にとっては大きなお世話だった。成美に同情されるいわれはない。成美の実家は裕福らしいし、本人も既にネイリストとして自立している。そんな金持ちの上からの目線で憐れみを受けたくない。

「バイトはもう決めてるの?」
「ううん、これから探すところ」しつこいな、と思いながら桃子は答える。
「そっか・・・・。ねえ、少しの間でいいんだけど、お店の助っ人やってみない?」
「お店? 成美さんのことろの?」
「うん。秋に新しいデザインをいくつか発表することになっているんだけど、よければ桃子ちゃん、ネイルモデルやってくれないかなあ。もちろん、新しいバイトが決まるまでの間だけでいいんだけど」
「私が?」

 桃子にとって魅力溢れる勧誘だった。もしかしたら、これはある意味チャンスなのかもしれない。こういうことがきっかけで、誰かの目に止まってプロへの道が開ける、ということもあるかもしれない。
 しかし、成美に借りをつくるのは嫌だった。もしこれで万が一モデルになれたとしたら、桃子は一生成美に頭が上がらないではないか。
「やめとく。ていうか、速攻でバイト決めちゃうから手伝う暇は出来ないよ」
 そっか、と成美は微笑んで話を打ち切った。

 亜衣の、美沙へのライブチャット講座も一段落ついたのか、ここからようやく本題に入る。
「来週は、みんな参加できるね。そのことで何か確認したいことはある?」
 亜衣が訪ねた。来週は亜衣が情報提供したオーディションが予定されている。
『背徳の女教師』という、いかにも怪しげなB級アクションVシネマのヒロイン役の公募だった。

 女教師という響きでは、この中では成美が適役に思えるが、ヒロインは女教師と敵対する女子高生らしい。
 そうなると外見では美沙の方が有利で、大人っぽい成美はいかにも年齢オーバーだ。だが、こうしたオーディションではヒロインに抜擢されなくても、運よく演技力が認められたり、監督やプロデューサーに気に入られたりすれば別の役を貰えるケースも稀にある。役者を目指すなら、多少キャラクターが合わなくても幅広くオーディションを受けておいた方がいい。

 桃子はこのオーディションについてはまるでやる気がない。女優志望ではないのだ。この時期、他にめぼしいものがなかったから皆と一緒に申し込んだだけだった。
 もちろん、いつも三人揃ってオーディションを受けているわけではない。受ける受けないは各自の判断だ。一緒になりやすいのはモデル関係。成美は役者にも興味があり、多少演技の勉強もしているらしいから、今回のようなオーディションには気合が入る。美沙は積極的に歌手のオーディションも受けている。歌とダンスには自信があるらしい。

 一番曖昧なのが桃子だった。一応モデル志望ということにしているが、あまり一貫性がない。演技の勉強はしたことがないし、歌はこの世で一番苦手な水泳の次に苦手だった。何か一芸を磨きたいと思うこともあるが、習う金がない。親には内緒でやっているし、反対された過去もあるので相談できない。
 唯一の傾向としては、特定のイベントやキャンペーンのために実施されるオーディションを選ぶことが多いということだ。合格すれば、とにかくそのイベントには参加できる。つまり、すぐに仕事にありつけるからだ。
 事務所が定期的に所属タレントや練習生を募集しているオーディションも受けてはいるが、この場合、すぐに仕事をもらえるとは限らない。合格後、先ずは一定期間レッスンを受けなければならないこともある。レッスンは有料のケースもあるし、途中で脱落してしまうこともある。もしそうなればなったで、何とかお金を稼いでレッスンを受ける覚悟はあるが、避けられるなら避けたいという思いもある。

 今回の『背徳の女教師』も、合格すればヒロイン役として即デビューできる。その一点だけで桃子は応募したが、合格するとは思っていない。まず書類選考があったが、それは三人ともクリアしていた。

「来週は、もう気合いれるだけっすー」美沙が張り切って言う。
「うんうん。女子高生役だもの。美沙ちゃんと桃子ちゃん、期待しちゃう」成美が調子を合わせる。
「センパイは、とにかく落ち着けば大丈夫す。絶対」美沙は桃子に向って言った。
「何のことよ?」
 桃子は何を言われているか、わからない。そんな桃子を見て、成美は肩を揺すりながら、必死に笑いをこらえている。
「審査員に向って、『トーコですーっ!』って怒鳴るのは、マイナスっす」

 桃子は名前をよく間違われる。そして名前を間違われることが大嫌いだ。自分が否定されたような気分になる。でもそれはある意味仕方のないことだった。「桃子」と書けば、殆どの人はそれを「モモコ」と読む。「トウコ」の方が珍しいのだ。
 桃子は生まれてこの方、一発で正確に名前を読んでもらった記憶がない。だから、一回間違われるのは止むを得ないこととして、我慢することにしている。だが、何度修正を訴えても、相手が一向に自分の名前を覚えてくれないと、仕舞いにはきれてしまう。過去のオーディションにおいては、審査員を怒鳴りつけたことが四回、勝手に会場を退出したことが一回ある。

「なによお、人の名前を覚えない方が失礼なんでしょお」
 桃子は頬をぱんぱんに膨らませた。
 成美が笑いをこらえながらなだめても一向に効果が上がらないのを見て、亜衣が話題を変えた。
「じゃ、次。一応一件だけ情報あり」
 三人が一斉に亜衣に注目する。
「三つのファッション系雑誌がタレント事務所と共同開催するオーディション。合格すれば当面は雑誌の専属モデル。募集人数は未定。ただし、三つの雑誌それぞれが別々に専属モデルを探すらしいから、合格者は三人以上になる可能性が高い」
 へー、と三人がほぼ同時に声を洩らす。

「結構いい話かもしれないわね。何かのイベントなの?」成美が訊いた。
「実はその辺の詳細はわからない。どうやらテストケースの線が濃厚だね。共同実施の方が効率的で、話題にもなるから宣伝効果も期待できる、というところだろう。ま、真新しいアイデアではないな。『スター誕生』みたいな発想だよ。成功すれば今後は定期的に開催されるんじゃないかな」
「でー、主催はどこっすか?」美沙が身を乗り出す。もうとっくに受ける気だ。
「事務所はネルモプロモーション、モデル専門だね。ここが発案したらしい。新しい事務所だから、シェア拡大を狙ったプロジェクトってところかな。雑誌は、えーっと『ロン』『マチェリー』それから『WANTA』、イベント名『ネルモ合同オーディション』、以上」
 おおおお、と三人がほぼ同時に声を洩らす。

 タレント事務所は無名だが、雑誌はそれなりに知られている中堅ファッション誌ばかりだ。桃子は『WANTA』は何度か読んだことがあった。ファッションに限らず、グルメ、レジャーなど内容は幅広く、むしろ総合情報誌的だが、その情報元の多くが投稿という、読者参加型のファッション誌として知られていて、多くの「読者ライター」「読者モデル」を抱えている。特に最近、読者モデルから芸能界にデビューする例が幾度かあったため、タレント志望者の登竜門的なステータスが出来上がりつつある。

「ただし、スケジュールはとても慌しいよ。募集開始の公表は来週ネット上で。申し込みは九月上旬締め切り。一次は書類選考、十月に二次から最終の四次審査までを一日でやりきる。ちなみに水着審査あり。結果は当日発表を予定しているが、まだ未定。受けるなら詳細を調べるけど?」
「お願いするっす」
「私もお願いするわ」
「うん、一応」
 三人がそれぞれ返事をして、今日の会合は終了となった。

(第四話につづく)




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