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「犬の肉球ブログ(連載中)」
【桃子編】 一 たまごの夏

犬の肉球ブログ 桃子編一 たまごの夏 第四話

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一 たまごの夏 第四話

「さて、行くか、美沙」
「あいー。亜衣さん」
「あら、これから二人でお出かけ?」
 同時に立ち上がった亜衣と美沙に成美が尋ねた。
「じぶんはバイトに出勤っすけど、その前に亜衣さんにパソコン買うの付き合ってもらうことになってるっす。いろいろ教えてもらいながら選ぶっす」
「そういうことだ。じゃあな」
「ついでにー、さっきのライブチャットの話、もっと詳しく教えてほしいっすー」
「だから女子高生は不可だってば」

 二人が話しながら消えるのを見送った後、桃子も席を立とうとすると、成美が止めた。
「まだちょっとお昼休み残ってるから、付き合ってくれないかしら」
 別段断る理由もない桃子は、面倒だと思いながらも承知して、アイスコーヒーの追加を注文した。追加分は成美のおごりだ。成美も同様にホットコーヒーを追加する。昼休みなのに、食事をとる気配がない。

「あのね、またおせっかいかもしれないけれど――」
 成美は新しくやってきたコーヒーを、砂糖もミルクも入れていないのにスプーンでかき回しながら言った。桃子はアイスコーヒーの上辺に少しだけミルクを差し入れて、そっとストローを差し込んだ。
「あ、ほら」
 成美は言いかけた台詞を打ち切って、桃子の仕草を指差した。
「なに、どうしたの?」
「桃子ちゃんの指と爪、綺麗よね。ねえ、やっぱりモデルやる気ない?」
「それはさっき断ったでしょお。なに、またその話なの?」
「違う違う。ごめん。モデルじゃなくて、引越しの話」
「引越しって、私の引越し?」
 桃子はコーヒーを吸い込みながら、生まれて初めて綺麗だと言われたような気がする自分の指を眺め、成美の返事を待った。
「うん。亜衣ちゃんから生活のこととか、バイトのこととか色々聞いてるから、引っ越した方が確かに楽にはなると私も思うけど――」
「それが、何か?」文句あるのか、と言いそうになるのをこらえた。
 生活のことを話題にされてたちまち桃子は不機嫌になった。誰だって人に知られたくないことがある。桃子は他人に弱みを、特に成美と美沙には自分が貧乏で困っていることを知られたくはなかった。
「――実際のところ、引越し代はあるの?」
 しっかりと一番の悩みのど真ん中を貫かれてしまい、桃子はコーヒーを吹き出しそうになった。

 いくら安いアパートを探したとしても、初めはまとまった金が必要だった。敷金礼金、不動産屋の仲介料、それに引越し先での当月分家賃で、とりあえず六ヶ月分くらいは用意しておきたい。加えて引越し業者への支払いもある。実家に相談するつもりでいたが、幾ら送って貰えるかはわからない。

「余計なおせっかい、って思うでしょうけど、私でよければ協力するわよ」
「そんなこと・・・・」
 一蹴したい申し出だった。だがそれ以上、桃子の口は動かなくなった。目の前の成美は後光が差しているように眩しく輝いて見えてしまった。
 一体何を言われたのだろう。哀れで可愛そうな自分に、神か仏が救いの手を差し伸べてくれたのか。それともそれは偽りの光景で、本当は哀れで可哀想でプリティなエンゼルフィッシュ(=桃子)に止めを刺すために、貪欲で獰猛でグロテスクなアンコウ(=成美)が、こっちへ来いと提灯を振って誘惑しているのだろうか。

 成美の真意は何なのか。恩を売りたいのか、それとも単なる哀れみか、同情か。桃子は俯いてストローをくわえ、コーヒーを吸い込みながら成美を上目に眺める。成美はのんびりと微笑みながら構えている。
「・・・・そんなに警戒して睨まなくてもいいわよ。別に同情や哀れみで言っているんじゃないわ。桃子ちゃん、ライバルだもの。だから、あげるんじゃなくて貸すって言ってるのよ――」
 成美は桃子の心情を察したように、優しくゆっくりと話し始めた。
「――だから、きちんと返してもらうわよ。もちろんゆっくり、少しずつでいいし、利息もとらないわ。その辺の金融に借金するよりは余程マシだと思わない?」
「・・・・確かに、それはそう、だけどお」
「だけど、なに?」
「どうしてそんな申し出するの?」
「どうしてって、そうねえ・・・・困ったときはお互い様、みたいな感じかな。知り合ったのも何かの縁だと思うしね」
「何かの縁って言ってもお・・・・。私と成美さん、そんなにお互いのこと詳しいわけでもないでしょお。仮に私がお金を借りたとして、その後行方を眩ましたらどうするの?」
「ああ、その辺はね、大丈夫だと思ってるわ」
 全てを見透かしているような成美の口の利き方が気に入らず、反射的に桃子は反論した。
「どうして? 亜衣も私とグルだったら絶対居所つかめないよお」
「だって桃子ちゃん、返してくれるもの」成美は全く動じていない。
「だからあ! どうしてそんなに信じるの?」
「必ずデビューして、ビッグになるんでしょ? そのためには日頃からスキャンダルはご法度だって自分で言ってるじゃない。お金にだらしない人は、男にだらしない女よりイメージ悪いもの」
「むう。そう言われてみれば・・・・そうかもしれない・・・・けどお」
 最後の方は声にならなかった。

 結局、桃子は成美に借金することになった。背に腹は替えられぬ、という言葉もある。同情や哀れみは大嫌いだが、たぶん今回の成美の申し出は、金持ちの気まぐれか道楽だ、と思うことにした。
 お願いします、と頭を下げようとする桃子を、真顔で成美は制止し、そんなつもりは一切ない、と強く言った。

 二人で店を出ると、猛暑に包まれあっという間に全身から汗が噴出した。
「相変わらず暑いのだめみたいね」成美が笑いながら桃子に言う。
「まあ、ね。でもねえ――」
「私の地元って浜松なんだけど、そこと比べてもさすがに東京の夏はこたえるわ。いつまでたってもお互い慣れないわね」
「え?」
 桃子は夏は嫌いではないが、暑いのが苦手だった。でも、そう思ったのは東京に住むようになってからだ。仙台に比べて湿度が高いだけではなく、建物、アスファルト、車、あらゆるものが熱を反射し、エアコンの室外機の放出熱と混ざって、辺りに降り積もるように沈殿する。その無機的で人工的な暑さが、桃子を息苦しくさせるのだった。
 そんな桃子の気持を成美は見抜いている。なにやら、今日は成美に一本とられっぱなしだ。

「じゃあね。もう仕事に戻らなきゃ。モデルじゃなくて、爪いじったりケアしたいときはいつでもお店に来てね。サービスしちゃうから」
 成美はそう言って中野の街に消えていった。

(第五話につづく)




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