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「犬の肉球ブログ(連載中)」
【桃子編】 一 たまごの夏

犬の肉球ブログ 桃子編一 たまごの夏 第六話

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一 たまごの夏 第六話

「ごめんごめんごめん、ごめんなさあああい!」
 完全に自分のせいでみんな落とされてしまった。
 今回やる気のない自分は落ちても何とも思わないし、二人に先を越されたくもない。でも自分が原因で二人が落ちるというのは桃子の矜持に反する。あくまで実力で、正々堂々と勝ち抜くべきなのだ。
 会場を後にして、立ち寄った近くのカフェのテーブルで桃子はひたすら謝った。
 成美は怒るより前に、なかなか笑いが収まらない。
 美沙も気にしてはいない様子だった。

「センパイ、平気っすー。じぶんも審査員見たとき、普通にきもくてちと引いたっす。『もういいやこれ』って思ったから、むしろ面白く落ちて正解っすー」
「あははは、次頑張ろう、次ね。桃子ちゃんのせいじゃないわよ。笑っちゃった私たちの自己責任だから」
「そうっす。問題は次っす。じぶん、かなり気合入ってます」
「美沙ちゃんは次、何受けるの?」
「この前亜衣さんが教えてくれた『ネルモ合同オーディション』っす。この時期、他にいいのは全然見つからなかったっす」
「そうね。私もそう思うわ。テストケースらしいからどういう審査か判らないけど、その分可能性が広がるってことも充分にあると思うし。桃子ちゃんは――っていい加減落ち込むのやめたら?」
「うん・・・・そうする」と言いつつも、立ち直るきっかけが掴めない桃子は、お詫びのしるしにアイスクリームを二つ買って無理矢理成美と美沙に押し付けた。

 じゃ遠慮なく、と言って成美は受け取った。美沙は何も言わずに受け取り、一口アイスを頬張りながら桃子に尋ねる。
「センパイはどうするっすか?」
「一応受けようかなとは思っているけどお」
「じゃあ、また三人で一緒ね。楽しみ」
「なるネエ、センパイ、今度はじぶん負けないっすよ。悪いけど、いただくつもりっす。次は気合あげまくりすからっ」
「あら、どうしちゃったの? 何かあった?」
「ネルモプロモーションはまだ出来たばかりらしいけど、最近急成長してるらしいっす。それに受かれば当分の間は雑誌の専属モデルっす。三誌ともそこそこメジャーじゃないすか。こんな美味しい話なかなかないっす。一気に表街道の陽の当たる坂道を駆け上がるって感じっす。さらに、今回はテストケースってことで、公表はネット上だけで誌面での宣伝がないうえに、募集期間も短いとなれば、競争率も低いかもしれないっす。これはチャンスっす。じぶん、人生懸けるに値すると思ってます」
 確かに、いつもの勢いだけで当たって砕ける美沙とは気持の入れ込み具合が違うようだ。美沙の言葉の端々に、一種の覚悟のようなものを桃子は感じ取った。

「じぶん、これが最後だってくらいの覚悟っす」 
「ええ、最後にするのお?」驚きの言葉を発しながら、桃子の脳裏に少しの仲間が減る寂しさと、多くの敵が減る嬉しさとが交錯した。
「わからないっす。小さい頃からの夢だったし、今までこのためだけに生きてきたようなもんだから、そう簡単には諦められないかもしれないっす。でもじぶんももうすぐ十八歳。来春は卒業っす。一つの転換期に差し掛かってるっす。
 卒業したら今みたいに自由にできないし、仕事も探さなくてはいけないっす。じぶん、ニートになるつもりはないっすから。たとえ落ちたとしても、少なくともこれからも夢を追い続けていいのか、望み続けられるのか、それとも諦めるべきか、今後のじぶんの進む道を占うような、そんな手ごたえだけは掴みたいと思うっす」
 美沙が決心を語るのを聞いたのは、これが初めてだった。桃子は驚きと感心で圧倒されてしまい、声が出ない。
 ただのロリ顔巨乳が自らの外見に自惚れて、遊び半分でグラビアアイドル志望「ごっこ」をしているとばかり思っていた。だが、その低めのトーンの声、瞬きしない大きな瞳と引き締まった唇は、美沙の本気度の高さを示している。

 桃子は悔しくなった。桃子は誰かに自分の夢をまともに語ったことがない。いるとすれば亜衣くらいのものだ。だがそれは話す相手がいないのではなく、堂々と話す勇気がなかったのだ。
 言えば「馬鹿じゃないの」「無理に決まってる」「周りからチヤホヤされたいだけだろ」と返されるに決まっている。その非難を受け止める度胸がない。それを平然と言ってのける美沙を見て桃子はビビッた。ビビッている自分自身が悔しかった。

 うんうん、と成美は頷きながら聞いている。成美の表情は真剣なのか微笑んでいるのかよくわからない。嬉しそうでもあり、心配そうでもあり、だが全てを受容できるような穏やかな顔つきだった。
 桃子はそんな成美を見て、なんかお母さんみたい、と思った。
「でも、そういう意味では私達にもチャンスよね。負けないように頑張ろう」
 急に成美から同意を求められ、桃子は慌てて笑顔を取り繕って対応した。

     *

 帰宅してパソコンを立ち上げると、亜衣からメールが届いていた。
 例のネルモ合同オーディションの募集が公表されたことと、その概要が確認できるネルモプロモーションのアドレスを教えてくれるものだった。

 早速アクセスしてみると、そのままネット上で申し込みが可能だった。履歴書と写真を送ればいいらしい。いくつものオーディションをこなしてきた桃子には、どちらも予め用意してあるのでもう慣れっこだ。ほいほい、といつもの調子でメールに添付して、はい送信、と呟きながら申し込んだ。

「あ・・・・」
 申し込みが完了した時点で、昼間の美沙を思い出して不安になった。
 美沙の言っていたことはよくわかる。美沙は高校卒業を機に、今まで追ってきた夢を諦めるかどうかの判断を下そうとしている。桃子の場合は逆に、高校卒業を機に夢を追うことを決めた。転換期、という意味では同じだ。
 だがその転換期の過ごし方はどうだろう。自分は美沙のように、真剣に自分の生き方や人生について考えたのだろうか。よく思い出せない。思い出せないということは、印象に残っていないということで、それはつまり当時何も考えていなかったということではないのだろうか。
 そして今、上京して一年半が経った。うまく単位が取れれば来春は短大卒業だ。また転換期が近づいているのではないか。

 そんな自分は高校卒業してから今日まで、そしてこれからのことについて、美沙ほど真剣に考えているのだろうか。
 いつか本物の眼を持った人が私を見つけてくれる。だからそれを待っていればいい。あとは家賃とバイトの心配をするだけの毎日。これでいいのだろうか。
 ・・・・本当に自分は本気なのか?

 何を言っているのだろう。本気だからここにいるんじゃないの。何のために東京に来たと思っているの。
 では、本当に本気なら、何故たった今、オーディションの申し込みをほいほい、と鼻歌交じりに送信したのか。
 履歴書は一度書いたら書きっぱなし。申し込みの度に内容を吟味して、直すところは直して、より読みやすく、よりわかりやすく自分をアピールできるようにアレンジしていく必要はなかったの? 
 写真だって自分で充分に満足できるまで、もっともっとたくさん撮って、最新の一番綺麗で、自分らしさが表現できている写真を用意するべきではなかったの?

 桃子は思いっきり頭を振って不安を取り除こうとした。
 いいや、こんなことで弱気になるのはやめよう。自分で自分を疑ったら、終わりだ。自分を信じられるのは自分しかいないのだから。もうやってしまったことは仕方ない。次のことを考えよう。
 桃子は自身のブログ『犬のぷにぷに』を開いた。
 相変わらず誰も見てくれていないことを確認した後、記事を更新する。どうせ誰も見ていないのだから、思い切り書いてもいいだろう。

  次こそは期待するのー!
   今日は某映画のキャストのオーディションを受けましたが、毎度のごとく落ちました。
   しかも審査員がすごく失礼で、我慢しきれず怒鳴っちゃった結果なので、少しだけ反省。
   でも後悔はしてません。今回は自分とは合わなかっただけです。
   そういうのに無理して受かったとしても、絶対あとでまた嫌な思いをすることになるに決まってるし。
   何よりも、終わったことにいつまでもクヨクヨするのは私らしくない! 寝て忘れてしまおう。
   それよりも次ですよ次!
   早速さっき次のオーディションに申しこみました。
   モデル関係のやつですが、結構よさげです。受かれば憧れてる雑誌のモデルになれるかもしれません!
   これは気合入れまくりです!
   力出し切って挑みます!
   人生懸けますくらいの覚悟でいきます! 
   がんばるぞー!


 適当に書いていても自然に気合が体に注入されるような感覚を覚える。本当に人生懸けるくらいのつもりでやってみようか、と桃子はいつの間にかその気になってしまった。
 これまでのオーディションに欠けていたもの、それは自分がどれだけ本気かということを、積極的に訴えることだったかもしれない。本気になれば美沙になんか負けるわけがない。
 本気をアピール。そうだ、これでいこう。

(「一 たまごの夏」終了。次回から「二 出会い」です)




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