スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←犬の肉球ブログ 桃子編四 残念会とお祝い会 第六話・その二 →(雑記)ちょっとだけお休みします
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 
もくじ  3kaku_s_L.png 王様の宝物
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記・ひとり言
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【犬の肉球ブログ 桃子編四 残念会とお祝い会 第六話・その二】へ
  • 【(雑記)ちょっとだけお休みします】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「犬の肉球ブログ(連載中)」
【桃子編】 五 左手の革手袋

犬の肉球ブログ 桃子編五 左手の革手袋 第一話

 ←犬の肉球ブログ 桃子編四 残念会とお祝い会 第六話・その二 →(雑記)ちょっとだけお休みします
桃子編
五 左手の皮手袋 第一話

 荻窪の店で飲んでいる、という蓮の返事に従い、南阿佐ヶ谷駅から地下鉄に乗って荻窪駅まで移動した。ここで一度連絡を入れることになっていた。今度は通話ボタンを押して、直接蓮の携帯と繋げる。
「もしもし、木村ですう」
『あ、桃子さん。ちょっと待ってね』
 蓮の声は上手く聞き取れなった。どうやら周りがかなり騒々しいらしい。少し待っていると、蓮は静かなところに移動したらしく、再び聞こえた声はクリアだった。

『今からそっちに行くから、そのまま待っててくれない?』
「えー。悪いよお、私が行くよ」
『いや、ここはちょっと、あれだし』
「なに、なんか私に見られるとやばいことしてるのお?」
『いや、全くやばくないけど、ここ騒々しいし、別の場所がいいかなって』
「構わないよお。ガヤガヤしてても」
 半ば強引に店の名前と場所を訊き出して、桃子は歩き出した。

 蓮は何も言ってなかったが、おそらく幸秀と一緒に飲んでいるのだろう。
 おととい蓮が桃子を誘ったとき、幸秀は成美を誘っていた。二人とも断られたのだから、二人して暇になっているはずだ。別の場所に移るという蓮の提案に従ったら、もしかしたら蓮は桃子と二人きりを狙ってくるかもしれない。
 誰かと一緒にいたい、という気持ちで蓮に連絡はしたものの、二人きりというのは少し違うような気がしていた。それよりも三人で、この前の残念会のように、いつものバイト先のように気楽にいろいろと話ができたら、その方が楽しい。賑やかな方が、今の自分の気持ちにはフィットしそうな気がする。

 桃子の予想は少しだけ当たっていたが、かなりの部分は外れていた。
 店の前に立ち、看板を眺めて思わず立ち止まった。何度記憶を確認してもここに間違いない。だが、看板の店名に「カラオケバー」という文字がくっついているのは何故なんだ。
 カラオケバーって、オヤジ連中の溜まり場ではなかったのか?
 あいつら、ここで飲んでいる、ていうか歌ってるのか? 
 なんてこった!

 桃子は世の中で一番苦手な水泳の次に、歌が苦手だ。
 昔からカラオケボックスは天敵の棲処のような、近づいてはいけない場所だった。カラオケバーなんて言語道断だ。赤の他人に歌を聴かれてしまう分、余計にタチが悪い。天敵どころか、悪魔の巣窟に等しい。

 引き返すか――との考えが脳髄に閃いた。その衝動の赴くままに回れ右をしようと右足を半歩引いたところで、眼前のドアが勢い良く開き、中から幸秀が出てきた。反転する機会を失った桃子はそのまま固まってしまった。
「おう、来た来た。遅いから様子を見にいこうと思ってたところだよ」
「あ、あはは、こ、こんばんは――」
 引きつる作り笑顔の桃子を、幸秀は強引に店内に引き入れた。

 ミラーボールが煌めく中、ソファ仕立ての客席に、奥にはカウンター、そして店の中央にはスポットライトで浮かび上がる小さな円形ステージとスタンドマイク。全てが目眩を誘う光景だ。今はとりあえず誰も歌っていないのがせめてもの救いのように思えた。

 店内に客の姿はほとんどなく、一箇所だけ盛り上がっている小集団があるだけだった。貧血寸前の眼で凝視すると、その小集団の中に蓮の姿があった。
 蓮は桃子の予想通り幸秀と一緒にいたが、それだけではなかった。他にも桃子の知らない男が二人、それに女が四人。
「なにこれ、四対四って。もしかして合コン中だったとか?」
 桃子の姿を認めて駆け寄ってきた蓮に、仏頂面で尋ねた。
「ちがうちがう。みんな大学のサークルの仲間だよ」
 蓮の台詞にも全く表情を変えない桃子に、とにかく座るよう促し、蓮は桃子の隣に座った。幸秀は一番距離の離れた、テーブルの対角線上の位置に座った。

 男女数名の入り混じった視線が桃子に注がれる。知らない人ばかりの飲み会に同席するのは決して居心地がいいわけではないが、かつてキャバクラでバイトした経験のある桃子は、ある意味では慣れている。
 冷静さを失うことなく、周囲を見返した。特徴のない平凡な顔ばかりで、ブスもブ男もいないが、とりたてて際立った外見の持ち主もいない。男では間違いなく蓮が一番で群を抜いている。そして大差がついているものの、幸秀が二番だ。女では当然自分が一番。
 蓮が質問攻めにあっている。質問の内容はみな同じで、桃子を指しながら「その人、蓮の新しい彼女?」というものだ。蓮は笑いながら否定するが、女が二人、食い下がっている。どうやらこの二人は蓮に気があるらしい。

 ふーん、蓮って、モテるんだ。と桃子は心の中で呟く。
 左手の皮手袋はいただけないが、それを除けばイケメンだし、物腰は柔らかで、優しい。モテても全然不思議ではない。蓮に浴びせられている質問も「その人、蓮の彼女?」ではなく、「その人、蓮の新しい彼女?」である。「新しい」という単語の存在が彼のモテ具合を示している。今まで何人も女をとっかえひっかえしてきたのだろうか。
 一方、幸秀はどうやら全体の盛り上げ役といった感じで、見たところ男女の別なく、好意をもたれているようだ。頼れる兄貴ってところかな、と桃子は思った。

 質問攻めも終わり、桃子の隣で蓮が大きくため息をついた。その様子を見ていた桃子に、蓮は「ね、別の場所がいいって言ったの、わかるでしょ」と言って笑った。
 テーブル全体では盛り上がっているが、桃子に話しかける者はない。蓮が気を遣って相手をしようとするが、すぐに他の友だちの話題に巻き込まれてしまう。
 静かなところよりも賑やかな方が気が紛れると思ったが、その賑やかさに自分が同調できないと、むしろ静寂の中に身を置くよりも孤独が染み込んでくるようだった。
 ここでも独り。やっぱり帰ろうかな、と桃子は考え始めた。

 爆弾。
 不意に耳に飛び込んできた不吉な言葉に、桃子ははっとした。幸秀の声だった。
「そのうち爆発すんじゃねーの?」
 幸秀は笑って言った。桃子から一番離れた席で、両隣の友だちと話していた。
「やだ、何よお、爆弾って・・・・」
「桃子さん、どうしたの?」
 桃子の呟きを耳にした蓮が訊いた。
「爆弾って・・・・」
「ああ、最近ニュースやってたでしょ。蒲田で見つかった不発弾。で、ユリが――ほら、幸秀の隣の女の子が、その現場のすぐ近くに住んでるから脅かして喜んでるんだよ」
「やめて」
 突然桃子の声が大きくなり、全員が一瞬彼女を注目した。
「桃子さん?」
「爆弾の話は、聞きたくない!」

 場が静まり返った。桃子はそれ以上何も言わず、黙ったまま不機嫌なオーラを放つ。
 よりによって、こんなところでも爆弾なんて。最低だ。一番聞きたくない話だ。それともこいつ、わざとその話題をふったのだろうか。だとしたらこいつは・・・・。
 突き刺すような桃子の視線を受け止めて、幸秀は戸惑いながら「俺、何かやらかした?」という顔で自分自身を指差して、蓮に問うた。蓮は「よくわからない」という顔で首を傾げた。四人の女は桃子をチラチラ見ながら「なに、この女」という醒めた態度を示し始めた。

「よっしゃ、歌うかー!」
 場を仕切りなおそうと、幸秀は自らマイクを取って歌い始めた。店内に大音響で音楽が鳴り響き、テーブルは何とか再び盛り上がりを取り戻す。でもカラオケ嫌いの桃子には何の効果もない。
「せっかくだから桃子さんもなんか歌いなよ」
 歌い終えてテーブルに戻ってきた幸秀が桃子に勧めた。周りも幸秀にあわせて、桃子に歌わせようと、囃し立てる。
 一体何が「せっかく」なのかと、桃子はうんざりする。
「私、歌いません」
 きっぱりと断りきった桃子に再び場が沈みかけたが、すぐさま別の男が歌いだしたのでなんとか持ちこたえた。
 しかしこの態度で桃子は他の者から完全に無視されることとなった。

(第二話につづく)




にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ  
お気に召しましたら、ぽちっとしていただけると励みになります
関連記事


もくじ  3kaku_s_L.png 
もくじ  3kaku_s_L.png 王様の宝物
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記・ひとり言
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【犬の肉球ブログ 桃子編四 残念会とお祝い会 第六話・その二】へ
  • 【(雑記)ちょっとだけお休みします】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【犬の肉球ブログ 桃子編四 残念会とお祝い会 第六話・その二】へ
  • 【(雑記)ちょっとだけお休みします】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。