スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←(お知らせ)かけもち大変なので『芍薬』に集中します →(雑記)字が好きです♪
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 
もくじ  3kaku_s_L.png 王様の宝物
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記・ひとり言
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【(お知らせ)かけもち大変なので『芍薬』に集中します】へ
  • 【(雑記)字が好きです♪】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

芍薬の部屋(連載中)

芍薬の部屋 話の十 瑞奈(前編)

 ←(お知らせ)かけもち大変なので『芍薬』に集中します →(雑記)字が好きです♪
「寒い。眠い。お腹すいた・・・・」
 珠希が虚ろな表情で呟いている。
 横に並んで座る健吾も毛布にくるまりながら、体力の限界が徐々に近づいているのを自覚していた。

     *

 時代劇観賞会は、とりあえず借りてあった第一巻を観た後、翌日の午後から本格的に開始となった。
 記憶が不安定な分、ひと眠りすれば気が変わるか、あるいは時代劇のこと自体忘れているかもしれない、という淡い期待は脆くも崩れ、瑞奈は朝からやる気満々だった。
「しかたないわね――」
 珠希は早々に観念した、というよりも半ば諦めムードになっていた。

 幽霊は特定の思いの固まりみたいなもので、その思いに偏っているぶん、頑固な場合も多い。あれだけ強くお願いしてきたことから、どうやら瑞奈は時代劇については譲りそうにない。それに、頑固になるということは、これが真相に迫る手立てとなる可能性も充分にあるから、彼女の希望に沿った方が良いかもしれない。全部観たいならそうするべきなのだろう。
 このように説明されれば、健吾にも否やはない。

「そもそも瑞奈ちゃんの言は全部受け入れるべき、と言ったのは健吾くんだしね。ドラマだけじゃなく、ちゃんと瑞奈ちゃんの様子も観察してね」
 さりげなく責任を押し付けるような台詞を残し、珠希はレンタルショップに出向いて『壬生の牙』の二巻以降を借り、ついでに食べ物とアンテナケーブルを買ってきた。
 瑞奈の座っている六畳間からでは、ダイニングに置いてあるテレビはかなり距離がある。以前のように首だけになって観賞してもらうのも落ち着かないので、長いアンテナケーブルに繋いで、彼女の目の前にテレビを設置することにした。

     *

「寒い。眠い。お腹すいた・・・・」
 観賞会を始めて数時間。途中で夕食はしっかりとったはずなのだが、時刻が深夜への入り口に差し掛かろうとする頃になると、珠希の顔からは表情が消え去り、定期的に同じ台詞を繰り返すようになった。
 時代劇はもとより、歴史にもたいして興味がない彼女にとって、昼夜ぶっ通しのドラマ観賞は最早拷問に近い苦痛となりつつあるのかもしれない。

 一方、健吾は疲れを感じてはいるものの、実はそれなりに楽しめている。
『壬生の牙』と題されたこの幕末時代劇の内容そのものは悪くない。いや、むしろ出来の良い部類に入るのではないだろうか、と思える。
 健吾もドラマ、映画などの映像作品には疎いが、一見したところ考証はしっかりしているし、複雑な幕末の時代背景も分かり易く説明している。今のところ極端に荒唐無稽な演出もなく、一通り観ればある程度歴史の勉強にもなるかもしれない。

 だが、そういう真面目な作りである分、ドラマの雰囲気はかなり地味だ。興味のない人にとっては若干退屈かもしれない。それをぶっ通しで観ている珠希は言わずもがなだろう。
 実際、十年前に放送された時はそれなりの話題作だったらしいが、人気が出たのは物語の中盤、舞台が京都に移ってからのようだ。
 ドラマは主人公である土方歳三(ひじかたとしぞう)と、生涯の盟友である近藤勇の少年~青年時代から始まる。新選組副長として広く知られる土方だが、元々は武蔵国多摩郡(むさしのくにたまごおり)の裕福な農家出身であり、若き日の彼には様々な記録や逸話が残ってはいるものの、謎の部分も多い。したがって、ドラマでも序盤の数話は創作されたエピソードが多く、健吾も少し退屈だった。

 しかし話数が進み、DVDの第二巻になると黒船が浦賀沖にやって来たり、第三巻では珠希もご存じの江戸城桜田門外での大老暗殺と、時代が風雲急を告げる。第四巻でついに新選組の前身である浪士組が江戸で結成され、土方達は京へ向けて出発した。
 つまり、そろそろここら辺りからが本番、真骨頂とも言える部分に入って、面白くなっていくはずなのだが・・・・。

「寒い。眠い。お腹すいた・・・・」
 珠希にその助言は通用しそうにない。眼は充血し、唇は色を失っている。ストーリーを楽しむどころか、今の彼女にとって、テレビの映像はなんの意味もなさないただの光と音の塊と化しているに違いない。

 その時、ちょうど第四巻の再生が終了した。物語の流れとしては、次回から京都を舞台にした新章スタートとも言えるような、とても区切りの良い終わり方だった。
 よし、いいタイミングだし今日はもうこのくらいで――と、健吾の喉から出かかった宣言は、ほんのコンマ数秒先んじた瑞奈の声が封じた。
「次、お願いしますっ」

 絶句する健吾の横で、珠希の口から深く深く、そして白い溜め息が勢いよく吐きだされる。
「そんなに急がなくてもドラマは逃げないわよぉ。せめて休憩しようよー」
「珠希さん、静かにっ! 健吾さん、早く次っ!」
「・・・・はい。ごめんなさい」
「・・・・はい。ただいま」

 いつになく厳しい口調に、健吾は慌てて第五巻のディスクをセットした。
 再生が始まると瑞奈は画面を見つめたまま微動だにしなくなる。ほとんど瞬きもせず、その表情は真剣そのものだ。
 その様子に健吾は首を傾げ、珠希は肩をすくめる。

「なんだか瑞奈ちゃん、いつもと雰囲気違ってる気がするんだけど。ちょっと怖いというか、キツイような・・・・それだけ観たかったってことなのかな。このドラマ」
「いつもと違う、という点は同感ね。ドラマへの執着のなせる技なのか、それとも、これが本来の姿なのか――」
「えっ?」
 意外な言葉に思わずを顔を向けると、珠希は「ふああ」と大きく口を開けて欠伸をしているところだった。健吾の視線に気づいて、慌てて両手で口を塞ぐ。
「なによー、そんなに見ないでよー、そんなに驚かなくてもいいでしょー」
 珠希の態度も普段と違ってぞんざいと言うか、雑な感じがするが、これは寒気や疲労や眠気から来るものだと理解している。

「いや、驚くよ・・・・本来の姿って、どういう意味?」
「実は、瑞奈ちゃんの様子は、昨日からちょっとおかしいと思っているのよ。私の中ではある仮説が――」
 珠希の台詞はここで途切れた。

 いつの間にか、瑞奈がこちらを向いている。
 キッと鋭い視線で睨み、その口元から
「チッ」
 と舌を打つ音が大きく発せられた。

 その衝撃的な光景に、健吾の頭は真っ白になった。
「し、舌打ちされちゃった! ていうか、瑞奈ちゃんが舌打ちしたわ。よりによって舌打ちよ! 瑞奈ちゃんがイラついてるよ!」
 なぜか珠希は興奮気味だ。
「そこ、うるさいですよ!」
 と、低めでドスの効いた声を飛ばして珠希を大人しくさせ、瑞奈はゆっくりとテレビに向き直った。

「あ・・・・あ・・・・」
 ――あ、あれは何? 今の何? 誰?

 事態を飲み込めず、思考もしどろもどろな健吾。助けを請うように思わず視線を珠希に向けたが、言葉がうまく出ず、ただ瑞奈を指差しながら口をパクパクさせるだけだった。
 珠希も相応に衝撃を受けたようで、健吾の態度に共感するように何度も頷いた。
 その顔は疲れきっていかにも眠そうだが、半ば閉じかけた瞼の隙間から僅かに覗かせる眼光は、好奇心のためか幾分力を取り戻しているように見えた。

「やっぱり変よねぇ。変すぎよねぇ?」
 ゆっくりと小さく、内緒話をするように珠希は口を開いた。
 本人に自覚があるのかないのか、口元には薄っすらと笑みが浮かんでおり、整った顔立ちが不自然に歪む様は、何かしょうもないことを思いついた悪戯っ子を連想させる。
 同意を求められているような口調だったので、健吾は無言のまま頷いた。

「――うん。やっぱり私の睨んだ通り、記憶が甦り始めるとともに、瑞奈ちゃん本来の姿――つまり、生前の性格に戻りつつあるのかも」
「え、じゃあ今の、ちょっと目つきがキツくて怒りっぽいのが、瑞奈ちゃんの本来の性格ってことなの?」
「キツイかしら? 今までが柔和過ぎたとは思わないの?」
「うっ」
 ショックを受ける健吾を見て呆れたように珠希は続けた。

「私だって彼女がどんな性格だったかなんて分からないわ。まだ完全に元通りというわけではないでしょうし、今はドラマに集中したいから、邪魔されたくないってだけなのかも。機嫌がいい時はいつも通りかもね。相変わらず敬語っぽい口調だし」
「ということは、やっぱり、このドラマには並々ならぬ思い入れがあるのかなあ?」
「それか、よっぽど歴史好きだったとか。瑞奈ちゃんが生きてたら、今頃は・・・・えっと、何て言ったかしら、そういうの好きな女子。もう死語かな?」
「あ、歴女ってやつ?」
「そうそう、それ。そうだったら、健吾くん趣味が合って嬉しいでしょ?」
「な、なにを・・・・別にそんなことは――」

「もおおおっ! うるさいですっ! 真面目に観てるんですから、邪魔しないでください!」
 いきなり瑞奈の怒号が飛んできて、気づかぬうちに二人の声がだんだん大きくなっていたことに気づいた。

「「ごめんなさい。以後気をつけます」」
 二人は委縮し、深々と頭を垂れた。
 しかし瑞奈の機嫌は直らない。

「話が分からなくなっちゃったじゃないですか。この巻、もう一度最初からお願いしますっ!」
「がーん」
「珠希さん、何か?」
「いえ、なんでもないでーす・・・・」
 絶望に染まる珠希。

 これはもう、瑞奈に従うしかない。おとなしくしていれば、それだけ早く最終回が訪れる。その希望を糧として乗り切ろう。
 健吾がリモコンを操作して、第五巻冒頭からの再生が始まる。
 瑞奈は再び画面に釘づけになった。
 もう健吾も珠希も言葉を発しようとはしない。ただひたすらにテレビを眺めて、そしてこの巻で今日の観賞会が終わることを祈っていた。

 しかし――。
「寒い。眠い。お腹すいた・・・・。も・・・・もうだめ」
 三十分も経たないうちに珠希が不意に口走り、そのまま崩れるように畳に突っ伏した。
「た、珠希ちゃん、しっかり! しっかりするんだ。寝たら死ぬぞ!」
 慌てて健吾は珠希の全身を揺すった。
「起きるんだ、珠希ちゃ――はっ!」
 気づいた時には、もう遅かった。

「や――か――ま――し――っ!」
「ひええええええっ!」
 怒り心頭の瑞奈によって、部屋は冷気、いや寒波の嵐に見舞われた。

     *

 翌朝、瑞奈の様子はすっかり元に戻っていた。
 穏やかで緊張感のない、いつも通りの女の子――の幽霊。

「夕べはどうだった?」
 朝食をとりながら、念のために健吾が尋ねてみると、
「はいっ。とっても面白かったです。ああやって、新選組って出来ていくんですね。今日も続きが楽しみです」
 と、とても朗らかに答えた。騒いで邪魔した健吾と珠希を咎める様子もない。もしかしたら、ドラマのこと以外はあまり覚えていないのかもしれない。

「夕べは凄く集中して観てたみたいだけど、疲れてない? 何も急いで詰め込んで観なくてもいいと思うんだけど・・・・」
「いえー、全然疲れてません、元気ですっ!」
 どうやら瑞奈は今日もやる気満々だ。

「危険だわ――」
 珠希が神妙な顔つきで話しかけてきた。
「――今は普段通りの瑞奈ちゃんね。でも、ドラマが始まったら、きっとまた夕べと同じような『暴君瑞奈』に豹変してしまうのね」
 まあ、そうだとしても要は邪魔して怒らせなければいいわけで、その点では、興味を持てずにドラマに集中できない珠希の方がよほど危険な存在だ。

「そろそろ彼らも新選組を名乗る頃だし、有名な歴史的エピソードとの絡みも増えてくるから――」
 珠希をおとなしくさせるためには、彼女にもドラマを楽しんでもらえればいい。そう思い多少なりとも興味を持ってもらおうと助言を試みると、意外にも瑞奈が反応した。

「そうなんですかあ、いよいよ新選組誕生なんですね。次の巻くらいですかあ? あ、でも知らない方が楽しそうだから、あまりネタバレしなくていいです」
「え? 瑞奈ちゃん、途中までは観てたんでしょ?」
「はい。でも、実は観始めたのは途中からで、序盤の方は観ていないんです。昨日観た話は全部初めてでした」
「そうだったのか・・・・だからこの大長編を最初から観たいとお願いしたんだね」
「はい。ワガママですみませんけど、これが最後ですから」

 申し訳なさそうに俯く瑞奈。
 夕べの暴君、いや健吾にとっては大魔神か雪女という表現の方が印象と合致するのだが、そんな姿とは全く結びつかない。
 今の瑞奈と夕べの瑞奈、果たして「本来の姿」はどちらなのだろうか。あるいはどちらでもなく、完全に記憶が戻った時にはさらに全くの別人格になってしまうのだろうか。

「その『最後』って言葉が引っ掛かるのよね。一昨日(おととい)に聞いたときからちょっと妙だと思ってたのよ」
 突然、珠希が割って入った。
「あなたにとって大事なお願いだって意味合いであることは承知しているわ。たまたま何となく口から出てきた言葉だったかもしれない。でも、今も『最後』って言葉を使ったわね。それでね、少し考えてみたのよ。この場合、私だったら『一生のお願い』って言葉を使うんじゃないかって。世の中には何度も一生のお願いをする人もいるけどね。敢えて『最後』なんて言い方をするのには、何か理由があるんじゃないの?」

 瑞奈は柔らかく微笑んで言った。
「私は――もう一生を使い果たしてますから」
 力みのない声は、少し悲しそうでもあった。

 それは瑞奈流の冗談だったのか、それとも本音なのか分からないが、珠希の息を詰まらせるのには充分だったようだ。
「うぐ・・・・ごめん、無神経すぎたわ」
 数秒後、謝罪の言葉とともに珠希が頭を下げ、
「そんな、謝らないでください」
 と、瑞奈がフォローするという、とても珍しい展開になった。

     *

 そのまましばらくうやむやな時間が流れた。
 いつもと立場が逆転してしまったような雰囲気に、珠希は居心地の悪そうな顔をして、なかなか話の続きを切り出せないようだ。

 このまま空気が重くなるのも避けたいので、健吾は話を元に戻すことにした。
 途中で珠希に割りこまれてしまったが、ドラマ上映を再開する前に、健吾にも確認しておきたいことがあった。

「ドラマの序盤は観てないって言ってたけど、どの辺りから観始めたか、覚えてる? どんなストーリーだった?」
「うーんと――」
 瑞奈は視線を左右に泳がせながら答えた。
「――お店が火事になったり、お花畑を守ったり、というお話しだったと思います」
「ふむ」
 ドラマの内容を把握しているわけではないので確証はないが、そういうエピソードなら健吾にも心当たりがある。
 つまり、瑞奈の記憶は正確だ。

「お花畑? 新選組がお花を守るの? すごく高価な花だったとか?」
 珠希がそれとなく会話に参加してきた。自然体を装っているが、ややぎこちない。黙り続けていると余計に居心地が悪くなるので、どんな形でもいいから喋っておきたい、といったところだろう。それでも質問されたことには答えるべきだと思ったので、健吾は解説することにした。
「それは、京都御所に御花畑という場所があって、そこを警備した話のことだと思うんだけど。守ったのは花ではなくて、本陣というか――」
「ふーん」
 相槌を打つ珠希の視線があさっての方向を向いている。
 ――やっぱり興味なし、聞く気ゼロじゃないか!
 それとは対照的に、瑞奈はうんうん、と両目を輝かせて健吾の説明に聞き入っている。
 ――なんか楽しそうだな。やっぱりこのコには歴女の資質があるのかな・・・・。
 つい、もっと詳しく説明してあげたくなってしまうが、それでは話がそれてしまう。

「えっと、あまりネタバレしない方がいいだろうから、このくらいで」と一旦この話は切り上げて、健吾は質問を続けた。
「ではこのドラマ、最後の方はどの辺りまで観たのか、覚えてる?」
「うーん、と」先ほどと同じように、瑞奈は視線を泳がせてから口を開いた。「と・・・・とば?」
「賭場? サイコロ?」
 と無用な突っ込みを入れてくる珠希を「しっ」と黙らせて、健吾は続きを待った。

「あ、そうだ! とば――鳥羽伏見(とばふしみ)の戦い、だったと思います」
「おお、はっきりと出たね」
「はい。確か、そこでイノゲンさんが・・・・」
 瑞奈は少し表情を曇らせ、俯いた。
「覚えてるんだね?」
「・・・・はい」

 ――やはりそうか。
 最初に瑞奈が時代劇を所望した時は、タイトルも内容もほとんど不明だった。
 なのに、ドラマ観賞を一日経た今朝の段階では、「いよいよ新選組誕生」とか「序盤は観ていない」などと口走っていた。これはドラマの内容に関する記憶が残っていないと出てこない台詞だ。
 そして今、鳥羽伏見で戦死した隊士の名を少し悲しげな声で挙げた。
 瑞奈の記憶の復元は相当進んでいると見て間違いない。

「健吾くん、これは――」
 珠希もどうやら健吾の質問の意図に気づいたようだ。
「うん、観賞会は無駄ではなかったみたいだね」
 二人は互いに頷き合い、同時に瑞奈に視線を向けた。
「で、どうする?」
「そうね、どうしようかしら。今、もの凄くあれこれ質問したい衝動に駆られているけど・・・・」

「あ、あのー、どうかしましたか?」
 じっと二人に見つめられて、瑞奈が不審がっている。珠希はわざとらしく咳払いし、健吾は慌ててその場を取り繕う言葉を探した。

「い、いや、何でもないよ――。そうか、御花畑から鳥羽伏見まで観ていたんだね。てことは、新選組の全盛期はカバーできてるね」
「全盛期・・・・そうですか。やっぱりあの後、どんどん悲しいお話しになっていくんでしょうか・・・・」
「あ、ごめん、ネタバレだよね、これ」
「いえ、もう随分と多くの人がいなくなってましたから、そんな予感はしていました」
「勿論気が済むまで観ていいんだけど、途中で辛くなったら言ってね」
「はい。でもしっかり最後まで観ようと思いますっ」
 瑞奈が不退転の決意を表明すると、珠希の口から苦笑交じりの溜め息が零れた。

「隊士の人たちがどうなっていくのか、見届けたいんです。特にあの人のことが――」
「あの人?」
「えっと・・・・あれ? 誰だっけ」
 瑞奈は小さな顎の先端に右手の人差し指を当て、眉間に皺を刻みながら唸りだした。
「うーん。変ですね・・・・ついさっきまで覚えてたのに、名前が出てきません」

「ま、観てれば思い出すでしょう。そろそろ始めましょうか」
 珠希が毛布を準備しながら言った。
 初手から諦めムードの昨日と違って、ドラマ観賞が瑞奈に少なからず影響を及ぼしているらしいことが分かり、多少は前向きな姿勢を見せている。
「もう少し付き合うしかなさそうね」
 健吾は頷き、夕べの続きである『壬生の牙』第六巻をセットし、リモコンの再生ボタンを押した。

(つづく)


約二カ月ほど空いてしまいました><
今後は今作をメインに進めていきますので、多少はマシに……なってほしいです。
今後もよろしくお願いいたします。



にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ  
お気に召しましたら、ぽちっとしていただけると励みになります
関連記事


もくじ  3kaku_s_L.png 
もくじ  3kaku_s_L.png 王様の宝物
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記・ひとり言
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【(お知らせ)かけもち大変なので『芍薬』に集中します】へ
  • 【(雑記)字が好きです♪】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【(お知らせ)かけもち大変なので『芍薬』に集中します】へ
  • 【(雑記)字が好きです♪】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。