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芍薬の部屋(連載中)

芍薬の部屋 話の十 瑞奈(中編・1)

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「しっかし、この鴨ってヒトは乱暴ねー。実在したんでしょ? 本当にこんな性格だったの?」
「実在はしてるよ。まあ、本当の性格がどうだったかは当時の人でないとね・・・・」
「どうしてあんな人がトップなの? ていうか、新選組のトップって近藤勇じゃないの?」
「いや、今はまだ壬生浪士を名乗っている段階で、これから――」
「もしかして鴨を追い出すの? どうやって?」
「それはネタバレになるから・・・・」
「それにしても、八木さんが一番大変よね。ていうか、この人たち家賃とか食費とかちゃんと八木さんに払ってるの?」

 珠希からの質問ラッシュが止まらない。
 隊士が寝泊まりしている八木家の家賃が気になるのは、さすが康則叔父の娘、不動産業が身近であるといったところか。

 時代劇観賞会を再開し、テレビの前に集まる三人。
 瑞奈は相変わらず抜群の集中力で、邪魔するものは容赦しないぞっ、というオーラを放ちまくっている。
 歴史好きの健吾もドラマを充分に楽しんでいる。ストーリー的にも、そろそろ土方、近藤らが新選組として歴史の表舞台に躍り出ようという頃合いだ。ドラマ『壬生の牙』としては、第一部中盤の盛り上がりに差し掛かりつつあるような辺りだろう。

 一人蚊帳の外で、最も苦労しているのが珠希だった。
 この観賞会が決して無駄ではないと分かったことで、多少は前向きな姿勢を見せるようになった。そして、まだまだ先が長いこのドラマが終わるまで瑞奈に付き合うためには、やはりストーリーや人物を把握し、一緒に楽しむのが上策と気づいたのだろう。
 興味がなくて序盤スルーしてしまった分を取り戻し、今からでもなんとか内容を理解して追いつこうと、事あるごとに健吾に質問してくる。
 健吾は内心辟易としていたが、珠希なりに努力しようとしてのことだから、可能な限りは返答する。勿論、瑞奈の邪魔にならないよう極力小声でやり取りするのだが、やはり多少は聞こえてしまうのだろう。時折ビクっと反応したり、鬱陶しそうな光を湛えた流し目を寄越したりしてきた。
 それでも昨日と違って怒ったり文句を言ったりはしてこなかった。珠希と健吾の会話が雑談ではなく、あくまでドラマの内容に関するものだったから、我慢しているのだろう。

 ドラマでは、珠希が指摘したように、芹沢鴨が暴れまくっている。
 江戸で結成された浪士組は京に着くや、すぐに瓦解してしまい、江戸に帰還する者と京に残留する者に割れてしまう。残留組は壬生浪士を名乗り、筆頭組頭として組織を仕切っていたのが芹沢だった。この時点で近藤勇も組頭のうちの一人であり、いわばナンバー2相当の地位にいたわけだが、壬生浪士は事実上芹沢一派と近藤一派に分裂しており、水面下では激しい権力闘争が繰り広げられている。

 会津藩より賜った「京都守護職御預り」という立場を傘に、商家に押し入って金銭をふんだくったり、勝手に訴訟を請け負って法外な報酬を請求したりと、芹沢はやりたい放題である。
 逆らえば何をされるか分からないので、みな渋々従うしかない。社会や身分制度などの背景もあるから、現代の警察とはだいぶ感覚がかけ離れているので同列に論じることはできないが、それでも治安組織であるはずの彼らが、むしろ京の人々にとってかなり迷惑な存在になってしまっている。これでは「壬生狼」と忌み嫌われるのも仕方ない。

 ドラマでは、この芹沢の横暴ぶりを丁寧に、そしてかなり誇張して描いている。加えてかなり頭も悪そうだ。後に近藤一派が組織を掌握することの正当性を強調するための演出なのだろう。史実でも芹沢は乱暴だったらしいが、一方で教養人でもあったはずだから、ちょっと残念な気がした。
 そんな後先考えないヒャッハーな感じの芹沢とその仲間たちを尻目に、主人公土方は着々と組織基盤を固めていく。隊士を増強し、部隊編成と命令系統を整え、厳格な隊規を定める。有名な段だら模様の隊服が作られたのもこの頃だ。
 そして、時が動きだした。

「あ、火事・・・・ていうかこれって放火だよね。もしかして、これかしら?」
「たぶんね」
 正確なところは本人に確認しなければ分からないが、健吾の新選組に関する知識で見る限り、瑞奈が口にした「お店が火事」というのは、この場面だろう。
 即ち、大和屋焼き打ち事件。
 金を出し渋った大和屋に、芹沢が怒り狂って店を滅茶苦茶に壊した揚句、火をかけた。さすがにやり過ぎで、横暴ここに極まれり、という場面だ。これは芹沢に纏わる有名なエピソードで、大砲を持ちだして撃ったなんて描かれる場合もある。
 夜の空を焦がすかのような巨大でダイナミックな炎が画面を埋め尽くす。これでは大和屋どころか近隣を巻き込んだ大火災になっちゃうよ、という大袈裟な演出で、ドラマは一旦エンディングを迎えた。

「ねえ、瑞奈ちゃん、今のがあなたの記憶にある『お店が火事』のシーンだったかしら?」
 ディスクを交換する合間に、透かさず珠希が尋ねると、瑞奈は「うーん、はい・・・・」と、やや自信なさげに首を少し傾けた。
「・・・・そうだと思うんですが・・・・お花畑が出てこなかったですよね・・・・これじゃないんでしょうか? 私、何か勘違いしてるんでしょうか」
「いや、合ってると思うよ。このまま続きを観れば分かるよ」
 健吾は一言だけフォローを入れた。次回予告のタイトルが「八月十八日」だったので、まず間違いないと自信を持つことができた。
「本当ですか?」
 瑞奈はまだ確信が持てないといった表情だが、あまりネタバレをしてもいけない。解説したくなる衝動を抑えながら、健吾は新たなディスクをセットし、再生ボタンを押した。

「あ・・・・これだ。これですっ!」
 冒頭、いわゆるアバンタイトルの段階で、瑞奈は狂喜した。
 ドラマは前回のあらすじとして、火事のダイジェストシーンから始まった。大幅に編集してあり、しかもナレーションの音声も重なっているため、前回のラストの火事シーンとはやや雰囲気が異なる。その辺りが、瑞奈が自信を持てなかった点なのだろう。

 そしてこの回のサブタイトルが「八月十八日」。
 これは主に会津や薩摩などの公武合体派が手を組み、朝廷を左右するほどの影響力を持った長州とそれに与する公家の一派を京から追放するクーデター「八月十八日の政変」を指すことは明らかだ。
 会津や薩摩は武装して御所の各門を封鎖。その際壬生浪士にも出陣命令が下る。
 そして、彼らに任されたのが「御花畑」と呼ばれる場所ということになる。
 別に花を守ったわけではなく、会津本陣警護の一画という位置づけなのだろう。実際、御花畑には藩主(京都守護職)松平容保が宿所に使った建物があったらしい。

「お店が火事」と「お花畑」双方が出てくるのは、おそらくこの回だけだ。つまり、実際に瑞奈が『壬生の牙』を観始めたのはここからと見てほぼ間違いない。
 それは、瑞奈にとってこれまでは「初めて観るドラマ」だったのが、ここからは「見たことがあるドラマ」へと移り変わったことを意味する。
 そのことが影響してなのか、彼女の鑑賞態度が、ガラリと変わってしまった。

「あ――お、おはなばたけでてきた――――っ! やったー!」
「出たねえ、よかったねえ、瑞奈ちゃん!」
 シリアスかつ緊迫した政変シーンなのに、なぜか乱痴気騒ぎの二人。
 ようやく覚えているシーンに出会えて安堵したのか、今まで極度の緊張状態が続いたことの反動なのか、とにかく妙にハイテンションだ。
 珠希がそれを煽るように囃し立てるのは、単にこの雰囲気の方が楽だからに違いない。

 一人蚊帳の外のような気分になったのは健吾だった。
 八月十八日の政変と言えば、幕末史でも非常に重要な転換点だ。この事件を機に、後の池田屋事件、禁門の変、長州征伐と、動乱に拍車がかかっていく。
 このドラマではこの事件をどう描くのか――それをじっくり観たいのに。
「あのう、もうちょっと静かに・・・・」
「なにこれ、芹沢が門番ともめてる。でも堂々としててちょっとカッコいいわね」
「えーっ、こんなに怒鳴る人、私は怖いですよう」
 ――聞いちゃいないよ。

     *

 一時の緊迫した空気が嘘のように弛緩しきっている。
 まあ、娯楽作品を鑑賞しているのだから、気楽にしていられるのはありがたいことでもある。だが――。
「やったー! ついに新選組になりましたよーっ!」
「つまり、ようやくここからが本番ってこと? まじで長いわね、このドラマ」
 ――もう少し落ち着いてほしいのだが・・・・。

「せ、せ、せりざわしゃ――――んっ!」
「え、え、え――――っ! こ、こ、殺されちゃうよ!」
 二人の絶叫の中、いつの間にか壬生浪士は新選組を名乗るようになり、そしてついに芹沢鴨が暗殺され、組織は近藤一派が完全に支配する体制となった。それはドラマとしても相当な見せ場であったはずなのだが、セリフなどは殆ど聞き取れなかった。
 ――まあ、二人して楽しんでいるのなら、それでいいか。
 もう健吾は諦めた。

 二人の盛り上がりが最高潮に達したのが、おそらく新選組にまつわるエピソードの中で最も有名な「池田屋事件」の時だ。ドラマの展開も新選組の誕生辺りから急加速し、とにかく怒涛の展開で息つく暇もないまま、いきなり事件へと突入する。
 いわゆる不逞浪士の企て――御所に火を放ち、混乱に乗じて要人の暗殺や誘拐を図る――が発覚し、会合場所を突き止めるための市中探索が行われる。
 そのスリリングな展開に、いつしか全員が画面に釘付けとなった。
 そして始まる、池田屋での激闘。
「いけーっ、がんばれーっ!」
 何だかスポーツ観戦でもしているような瑞奈の声援はどことなく微笑ましく、
「うら――――っ、近藤! 斬れ! 殺れ! やっちゃえぇぇ!」
 目が血走っている珠希は少し怖い。

 この時、新選組は二手に分かれて市中探索を行っていた。人数的に主力部隊は土方副長率いる二十四名だったが、先に池田屋を見つけたのは近藤隊の十名。逃走防止のため周囲を固める必要もあったため、最初に池田屋の中に乗り込んだのは四名だけだった。
 対する尊攘派志士は二十名以上。まさに決死の斬り込みだ。

 不利な状況下でも臆することなく突っ込んでいく近藤や隊士たちの姿に、二人は益々高揚するかと思いきや――。
 途中で瑞奈が黙り込んでしまった。
 その目が画面から離れることはないが、両手で口を塞ぐようにしたまま動かない。表情を読みとることができないが、どことなく辛そうにも見えた。
 握りこぶしを作り、テレビに向かって半ばシャドーボクシング状態になっていた珠希も、その小さな異変に気付いたようだ。瑞奈の顔を覗き込み、異変の原因を求めるように、画面へと向き直った。

「あ、これは・・・・」
 珠希も息を呑むように口を閉ざした。
 一人の隊士が、血を吐いて倒れていた。
 隊士の名は沖田総司。新選組でも近藤、土方と並び最も知名度の高い人物の一人で、若くして労咳(結核)で亡くなった悲劇の天才美剣士というイメージが定着している。
 池田屋で喀血するという場面は多くの映画や小説で描かれており、『壬生の牙』も例外ではなかった。沖田が咳き込むたび、鮮やかな赤が自らの隊服を染めていく。

 ――こんなシーンを観て、大丈夫なのだろうか?
 当人が切望した時代劇なのだから、余計な気遣いは無用なのかもしれないが、それでも健吾は一抹の不安を禁じえない。
 娯楽作品とは言え、斬ったり死んだり殺したりするシーンの連続である。しかも新選組では芹沢の件に見られるように、内部での様々な葛藤に起因する粛清も後を絶たない。『壬生の牙』は決して明るい話ではないのだ。
 それに加え、今度は沖田の喀血。これはつまり病死の予兆だ。
 瑞奈が自らの死を省みることを期待しながら、ドラマを通してあらゆる死を見せつけているような、後ろめたい気持ちが自然と湧きあがってくる。
 そんな勝手な思い込みに健吾が悶々としているうちに池田屋の回が終了し、ディスク交換となった。これで第九巻まで観終わったことになる。


(中編・2へつづく)


※久々の、実に半年くらい放置しての再開です><
いや、再開というより、気分は復活に近いです。反省しております。
今回、長くブランク開けてしまったことの反動が、色々詰め込み過ぎて長くなってしまいました。
長すぎるので、(中編・1)(中編・2)と分割することにしました。
元々はひとまとめのエピソードです。無理矢理分けたので、特に今回=前半は話しが進まないうちに「つづく」になるという、中途半端な終わり方になっております。
後半である(中編・2)も近日中に更新する予定です。
今後はもうちょっとマシなペースで行きたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。



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