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「白い彼女」
第七章 ケイコ(23~26話)

白い彼女 第23話

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第七章 ケイコ
第23話

 やっぱりあの二人を無視して水族館に行っていればよかった。ケイコ、コウイチと合流して十分と経たないうちに後悔した。このあとの「四人デート」は散々な結果になってしまった。

 一時間以上遅刻してきたのにもかかわらず、二人は挨拶代わりに「わるいわるい」と一言言っただけで、全く反省しているように見えない。妙にハイテンションで大騒ぎしながら、その場を仕切り始める。
「さっさと行こうよ、時間もったいないし、ここ寒いし」とケイコ。
「だよな、実際今日は人でいっぱいだろ、サクサク動かないとな」とコウイチ。
 だったら時間通りに来いよな、と心の中で呟くが、何も言わずに到着した東海道線に乗り込む。先頭はコウイチとケイコ。ケイコはコウイチの腕に、自分の腕を絡めるようにして並んで歩いていく。そのすぐ後ろにおれ、そのまた後ろにユカが何も言わずについてくる。

 車内はそれほど混んでいなかったが、それでも座席は全て埋まっていた。二人はベタベタひっついたままドアに寄りかかって何やら話している。おれとユカは黙ったまま並んで吊革に掴まった。
 こうしていると、とても四人で行動しているようには見えない。一体何のために集まったんだか。

 ケイコとコウイチはとても仲が良さそうに見えた。二人でいちゃいちゃしながら大声で盛り上がっているので、車内のいたるところから顰蹙と嫌悪の入り混じった視線が注がれていたが、彼らは一向におかまいなし。とりあえず車内では他人のふりをしておこう。
 ユカも二人に視線を送っていた。それはおれの初めて見る表情を伴っていた。あの二人を見て、呆れているのか、軽蔑しているのか、それとも、羨ましいのか――うまく形容できないが、少なくとも楽しそうではなく、むしろ暗く、力のこもっている顔つきだった。

「あの二人は喧嘩してたんだろ、仲直りしたってことかな?」
 おれが話しかけると、ユカはびっくりして、我に返ったように、いつもの穏やかな顔に戻った。
「あ・・・・と、よくわかんない。おととい電話したときはまだ喧嘩中って言ってたけど、でも、今は仲良さそうだし、戻ったってことでしょ。もしかしたら、今朝仲直りしてて遅刻したのかもね」

 今回の「四人デート」の裏には、おれとユカを付き合わせようとするケイコの企みがあるはずだ。おれはさらにその裏をかくため、すでにユカと付き合っている状態で今日を迎えようとしたが、それは実現していない。

 この約一月半の間、ユカとは頻繁に会ったし、お互いあまり気を遣わないくらいには親しくもなった。
 だが、おれもユカも付き合うとか、好きとかいう類の言葉は一回も発していない。その機会がなかったわけではないが、言い出すことができなかった。今まで女と付き合ったことも、女に告白したこともない。それが原因なのかは自分でもわからないが、言おうとすると、尻込みする。何故か抵抗感があった。
 ユカの方はどうなんだろう。おれに気があるのか、それとも、おれはあくまで男に慣れるための練習台なのだろうか。

 ケイコはきっと、もしかしたらコウイチも一緒に、おれとユカが付き合うように何か仕掛けてくるだろう。それにどう対処するかが、今日のおれの最大のテーマだ。あいつらの思い通りになりたくないし、借りをつくりたくもない。上手くかわしつつ、でも何かの拍子にユカの気持ちがわかるとありがたいのだが。

     *

 新橋を過ぎたあたりで、ユカの様子がおかしいことに気づいた。
 顔色が真っ白といってもいいくらい色を失い、立っているのも辛そうにしている。必死で吊革に掴まってようやく体を支えている感じだ。息も荒い。ケイコも気づいたらしく、コウイチをほったらかして駆け寄ってきた。
「ちょっと、酔ったかもしれない。でも平気だから」と言って力なくユカは笑ってみせたが、額には薄っすらと汗もにじんでいるようで、とても平気とは思えない。
 ケイコは上体を支えるようにユカを抱え、周囲を見回した。座れる席がないか探しているようだ。だが見たところ空席はどこにもない。

「もうすぐ東京駅に着くし――」あとちょっとの我慢だよ、と続けようとしたら、ケイコに睨みつけられてしまった。ケイコの真剣な眼差はどうも苦手で、反射的に萎縮してしまう。
 咎められるかと思ったが、ケイコは静かに「そうね」とだけ言ってユカの方を向いた。
「だな、駅まであと一分もないな。実際」
 いつのまにかコウイチが側に来ていた。
「電車に酔ったって? ユキノって乗り物に弱いんだ」
 ユカの顔を覗き込むようにしてコウイチが話しかけた。
「あ・・・・いえ、いつもはそうでもないけど、ちょっと、風邪気味みたいで・・・・」
「まじすか? それで今日大丈夫なわけ?」
「・・・・・・・・」ユカは答えられない。コウイチを避けているのか、それとも辛いせいか、コウイチと目を合わせようとしない。
 それを見てコウイチは少しムッとした表情で「なに、どうしたんよ」とさらにユカに顔を近づけた。ユカはほとんど反射的にコウイチから顔を背けてしまった。
「コウイチは黙っててよ」
 ケイコが間に入る。ほいほい、と言ってコウイチはそっぽを向いた。

 ほどなく東京駅に着き、とりあえずホームのベンチにユカを座らせた。
 その隣にケイコも座り、ユカの耳元で何か囁く。それを聞いてユカは小さく頷いた。
「悪いけど、ちょっと休憩させて」
 ケイコの提案は仕方ないものだと思ったが、コウイチは不満のようだった。さっきユカから露骨に拒絶反応を示されてすこぶる機嫌が悪そうだ。
「で、どうするんよ、このあと。まあ時間はあるからいいっちゃあいいけど、随分予定より送れてんだろ。実際。もうあっちはガンガン混んできてんじゃねえの?」
「しょうがないでしょ、調子悪いんだから」
「だから休むのはいいって言ってんじゃん。でも彼女辛そうだし、ちょっと休んで、それで良くなんのかよ。だめならこの後どうすんだって訊いてるわけ」
「そんなのあんたが考えてよ!」怒鳴るようにケイコが言う。
「ああ? なんで俺が考えんだよ。ディズニー行こうって、お前が言い出したんだろ」
 二人は睨み合った。ユカの言っていた通り、二人は最近喧嘩して、しかも未だに仲直りしていないということが判明した。

 ユカの体調も、これからどうするかも気になるが、喧嘩に巻き込まれるのだけは御免だと思い、じりじりと二人から距離をとり始めた矢先、コウイチはちっと舌打ちをして、話をおれに振って来てしまった。
「イワイはどうよ?」
「どうよって、言われてもなあ・・・・」
 正直どうでもいい。もともとおれはゲストみたいなもんなんだから、そっちで決めてくれよ。そんなおれの考えにはお構いなしに、コウイチはどんどん近づいて、おれを味方に引き込もうとしている。ケイコもおれを見ている。例の迫力ある視線だ。だから巻き込むなって。

 おれの目前で説得を試みるコウイチ。口から唾が飛び散っておれに向かって飛んでくる。なるほど、さっきユカがコウイチから顔を背けた理由がわかった。それはコウイチの息から漂ってくる。
「・・・・コウイチ、お前、酒臭いな」
「あ? ああ、夕べ遅くまで飲んでたんよ――って、そんなことどうでもいいだろ」
「あの、ごめん、もうそろそろ大丈夫だから、行こう」
 コウイチが言葉を続けようとするのを遮るように、ユカの声が聞こえた。見ると、ベンチから立ち上がるところだった。顔色は相変わらず悪いし、全然大丈夫には見えなかった。
「ちょっと、無理しなくていいよ」ケイコも心配そうだ。
「大丈夫。少し歩いているうちによくなるよ。ごめんね、私のせいで遅れちゃって」
 それはちょっと違うだろう。確かに今休憩したが、まだ十分も経ってない。
 もともと予定が大幅に遅れたのは、ケイコとコウイチが待ち合わせに遅刻したせいだ。早めに着いたユカは寒い中で一時間半は待たされたんだ。もしかしたらそのお陰で体調を崩したのかもしれないのに。
 いいかげんな二人は言うまでもないが、全部自分の責任にして、場を収めようとするユカにも腹が立つ。

 おれが不愉快になったことにケイコは気づいたのか、側まで来て「ほんとごめんね」と小声で謝った。
 ユカは元気なところを見せたいのか、勝手に「さあ、出発」と言って一人で歩きだした。コウイチもユカについていくようだ。それを見たまま、まだおれは歩き出さずにケイコと向き合った。
「いいよ、それよりユキノの世話してやんなよ。別に無理して行かなくてもいいんだし」
「あら、別にあたしじゃなくても、イワイが側で面倒みたっていいんだよ。私はコウイチの面倒もみなくちゃいけないし、マジな話ユカはイワイに任せたいんだけど、どう?」
 ケイコは微笑みながら言った。なるほど、これがケイコの攻撃か。この状況もおれとユカを接近させるために利用しようというわけだ。

「それにしても、お前ら喧嘩したままの状態で来るなよな」
 おれはわざと話を逸らした。ケイコは一瞬真顔に戻ったが、すぐにまた笑顔を作った。いろいろ事情があるのよ、そういう感じの苦笑いだった。
「ごめんね。でももうこういうことは二度とないかもしれないから勘弁して。とにかく、ユカは任せたね」
 おれの返事も聞かず、ケイコはユカとコウイチの後を追おうと歩きだした。おれも仕方なくケイコと並んで歩きだした。その時――
「やば――」小さく叫ぶと同時に、ケイコが血相を変えて走り出した。

 前方には十メートル位先に階段が、そのすぐ手前にユカとコウイチの後姿が見える。
 コウイチはユカに何かを話しかけながら、急速にユカに接近している。ユカは戸惑うように、コウイチと距離を置こうとしていた。

 コウイチは何をしている? まさかケイコとおれの目の前でユカにちょっかいを出しているのか?

 いつの間にか、おれも走り出していた。十メートルなんてあっという間だ。みるみるユカの背中が近づいてくる。
 違った。コウイチは別にちょっかいを出しているのでも、口説いているのでもなかった。
 コウイチの右腕がユカの背中にまわり、二人は密着した。おれもケイコも間一髪で間に合わなかった。

「ひっ」
 ユカの口から悲鳴が漏れ、そのまま階段の手前でしゃがみこんでしまった。
 追いついたケイコはコウイチを有無も言わさず突き飛ばし、ユカの背中をさすり始めた。不意を衝かれたコウイチは階段に足を引っ掛け、転んでしまう。
「この、なんだよ――」
 コウイチは文句を言おうとしたが、途中で息を詰まらせた。
 ユカはしゃがんだまま両手で口を塞いでいたが、我慢しきれずその場で嘔吐した。

(第24話につづく)




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