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「白い彼女」
第七章 ケイコ(23~26話)

白い彼女 第24話・前編

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第24話・前編

 厄介だ。最悪だ。ユカの男性恐怖症はこんなに重症なのか。
 数ヶ月前、痴漢から救ったときはもっと軽かったじゃないか。あの時ユカはオヤジに体を触られても半泣きするだけで済んだ。

 コウイチは確かに女好きだけど痴漢じゃない。奴なりの親切で、辛そうなユカが階段を昇るのを手伝おうとしただけだった。
 ケイコは奴にユカのことを話していなかった。今後も話すつもりはないらしい。転ばされた挙句、何の説明も聞けないお陰でコウイチは訳がわからず、あきれて帰ってしまった。

 ケイコとおれでユカを抱えるようにしてベンチまで運ぶ。
 頼まれたから手伝ったが、内心かなり躊躇した。おれがユカに触っても平気だという保証はどこにもない。
 ケイコとおれでユカの両脇を固めるようにして抱き起こす。おれが触れても、ユカはなんともなかった。なんともないこと自体はありがたいが、同時に「何故おれだけが」という疑問も浮かんでくる。
 勿論、今日の予定は全て中止。しばらく休んで、ユカが落ち着いてから家に送り届けることになった。

 帰りの電車は空いており、三人並んで座れた。
 ケイコとユカが座ったあと、どうするか迷ったが、ユカの隣は避けた。丁度おれとユカがケイコをはさむ形で並ぶ。
 ユカは「ごめんね」を連発していたが、そのうち頭をケイコに預けて眠った。
 車内は暖房がよく効いており、加えて窓から注がれる日差しは、外が寒いということを忘れさせるような穏やかさだった。

「今日はすまなかったね」
 ケイコはおれの方に顔を向けて言った。その手は寝息を立て始めたユカの頭を優しく撫でている。
「気にしてないよ。正直なところ、あんまり乗り気じゃなかったし。むしろ災難だったのはユキノだろう。それにコウイチ帰っちゃったけど、いいのか?」
「いいよ。実は最近コウイチとは上手くいってないし。そろそろダメだと思う。もともとコウイチはあたしのことあまり好きじゃなかっただろうし」
「そうなのか? 仲良さそうに見えたけどな」
 ケイコは何も答えず、ユカの額に手を当てて、「少し熱が出てきたみたい」と話題を変えた。

「朝会った時も風邪気味だ、みたいなこと言ってたな。寒い中でずっと待たされたから、悪化したんじゃないかな」
「あ、今責められた」
「そういう意味じゃないけど」本当はちょっとだけ責めているけど。
「悪いと思ってるよ」
「だから責めてないって。くどいな」
「今日のこともあるけど、これでユカの風邪がひどくなったら、二人のクリスマスも台無しでしょう」
「台無しもなにも、特に何か約束してることもないし、べつに、その・・・・おれはユキノと付き合っているわけでもないし」
「それはそうみたいだけどねえ」
 ケイコは微かに笑いを含んだ声でじっとおれを見つめた。その訳知りな態度に、意味もなく動揺してしまう。

「ねえねえ、ここだけの話、あんたはユカのこと、どう想ってるの?」
 来た。やっぱりこういう話題になるんだ。
「どうって、別に」
「別に、なに?」
「なにって言われても」
「好きじゃないの?」
「どうかなあ――」
「付き合ってみる気ある?」
 えらく畳み込むように、ストレートに訊いてくる。こういう詰め寄り方をされると、つい反射的に本音が出てしまいそうになる。迂闊なことは言えない、と思ったら言葉が見つからなくなってしまった。
「黙んないで、答えてよ」
「そんなこと言われても、よくわからないよ。どうしてそんなこと訊くんだよ」
「気になるからに決まってるじゃない」

 そりゃ気にはなるんだろう。ついさっき、コウイチを突き飛ばしてユカを介抱した姿を見ても、ケイコがどれだけユカのことを心配しているかは伝わってくる。やっぱりケイコにとってユカは目が離せない妹のような存在らしい。
 近頃はおれにユカを任せて、いや押し付けて自分はコウイチと遊んでいたが、今日の出来事で思い直したというところか。それとも、コウイチとの仲が冷めたことで、再び関心がユカに戻ってきたのかもしれない。関心がユカに戻れば、おれの存在は無視できなくなる。どういう関係なのか、お互い相手をどう想っているのか。

 ユカからはある程度話を聞いているのだろう。あとはおれの気持ちを知りたいということだ。だが、ケイコがおれにどういう答えを期待しているのかが不明な以上、何でもかんでも話してしまっていいかは、迷うところだ。今のケイコの態度を見ている限りでは、おれを邪魔者とは見ていない気はするが。
「嫌じゃなければ、付き合ってみれば?」
 黙っていると、ケイコが耳元で、軽い口調で囁いた。本気ではなく、冷やかし半分で探りを入れた質問だと頭ではわかっていたが、無意識のうちにおれは喋っていた。
「ケイコが付き合えって言うなら、付き合ってもいいかな」
 思わず口から出た台詞に、おれ自身驚いてしまった。
「なにそれ。人に言われたから付き合うの?」
「あ、いや――」焦って弁解しようとしたが、言葉にならない。
「なんか、訊いて損した」ケイコは呆れた顔で話を打ち切り、ユカの方を向いてしまった。そのまま時間は過ぎていき、目的の駅が近づいてきた。減速し、車両がホームに差し掛かる。ケイコはすっと立ち上がると、おれに向かって言った。
「あたしのことは気にしなくていいから」
「へ?」不意をつかれて何を言われたか、意味がよくわからなかった。聞き返そうとしたら、ケイコはすでにユカを起こしているところだった。



 ユカの家に着いた。初めて見るユカの家は、二階建ての、少し古い感じの木造住宅だった。
 辺りは静かな住宅街で、向かい側には白を基調とした比較的新しい感じの家が数件並んでいる。それらは皆同じ形をしていた。たぶん建売住宅なんだろう。

 ユカも無事送り届けたことだし、じゃあ、と言って帰ろうとすると、「なに言ってんの。上がりなよ」とケイコが言う。おいおい、ここはお前の家じゃないだろう。
「気にすることないよ。お茶ぐらい出すから。ねっ?」
 おれではなく、ユカに同意を求めるケイコ。
「でも、私――」ユカは少々困り顔のように見える。チラッとおれを見たがすぐに目を逸らした。
「大丈夫。あたしがやるから。勝手知ったる何とやらってやつよ」
 ケイコに押し切られ、ユカは頷いた。
「やっぱ帰るわ。無理しなくていいよ。体調だって良くないんだろ」
 無神経に上がりこんで内心迷惑がられても困るので辞退すると、ユカはこちらを見ないまま「とんでもない、よければ上がって」と言った。

(第24話・後編につづく)




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