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「白い彼女」
第七章 ケイコ(23~26話)

白い彼女 第24話・後編

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第24話・後編

 二階に上がると部屋が二つあった。一つがユカの部屋で、もう一つは兄の部屋だそうだ。
 ユカの部屋の前に着くと、しばらくここで待つようにケイコが言った。
「ユカはちょっとお着替えがあるから。覗いちゃだめよん」
「誰が覗くか!」
 ケイコはユカを伴って部屋に入り、ドアを閉めた。完全にこの家のことを知り尽くしている、という感じだ。小さい頃からの親友と言っていたから、数え切れないくらいここには来ているのだろう。ということは、ケイコの家も近所なのだろうか。

 ドア越しに、微かに物音や声が聞こえてくる。ただいま着替え中ということだ。
「誰が覗くか」と言った以上、覗いたりはしない。しかし聴覚が極度に鋭敏になってしまうのは、こういう場合仕方ない。だが、集中してみても、漏れてくる音が小さすぎて何がどうなっているのか見当もつかなかった。

 しばらくすると、ケイコが出てきておれを部屋に招き入れた。
 部屋の中に入った瞬間、足が固まってバランスを崩しそうになった。このまま部屋に入っていいのだろうか。
 着替えを済ませたユカはパジャマ姿でカーディガンを羽織り、ベッドに腰掛けていた。
「どお? 特別サービスで、ユカのパジャマ姿公開!」
 ケイコは妙にはしゃいでいる。
 ユカは顔を真っ赤にして「もういいでしょう?」と言って、ベッドの中にもぐりこんだ。
「いま測ったら、やっぱこのコ熱出しちゃっててさ、だからユカには横になってもらうことにしたから――どしたの? 見とれてないで座れば?」
「あ? ああ――じゃあ、おじゃまします」
 見回すと、カーペットを敷いた床に小さなテーブルと座布団が置いてあったので、そこに座ることにした。
 ケイコはお茶を淹れるから、と言って部屋を出て、ドアも閉めずに階段を駆け降りて行った。急に静かになった。この家には今、おれ達以外は誰もいないらしい。

 しん、と静まり返った部屋。まだ暖まりきってない空気の冷たさが、物音を拒んでいるかのように思えた。このままじっとしていると、自分が妙に場違いなところに座っているいる気がして落ち着かない。ケイコに早く戻ってきて欲しいと思う。

 ユカも何も喋らない。
 そういえば、東京駅からここに帰って来るまでの間、一言も会話していない。昨日までは、いや今朝横浜で会った時までは気兼ねなく話せたのに、今は話しかけると何かに咎められそうな、そんな圧迫感があった。
 今朝会ってから今までの間、自分の言動にユカの機嫌を損ねるようなものがあっただろうか。一通り思い出してみたが、それは見つからなかった。では、どうしてこうも避けられてしまうのだろうか。それとも、それはおれの気のせいで、単にユカは調子が悪くて話す気力がないだけ、ということなのだろうか。

 そおっとユカの方を見ると、ユカも横になったままおれの方を見ていたらしく、目が合ってしまった。
 おれは反射的に目を逸らせてしまい、ユカも慌てて肩のところまで被せてあった布団を鼻が隠れるくらいまで引っ張り上げた。首元辺りにチラッと見えていたパジャマのオレンジのチェック柄が、すっかり隠れてしまう。
 一段と気まずくなったような気がした。視線をテーブルに移すと、ティッシュの箱が置いてあった。それはまたおれを動揺させるに充分で、慌てて再び視線を逸らす。

 逸らせてしまった視線をどこに落ち着かせたらいいかわからず、部屋の中で泳ぐようにぐるぐると巡らせている。
 おそらく六畳くらいの広さのこの部屋は、掃除が行き届いていて塵一つない、という表現がぴったりの清潔さだった。部屋の中には今ユカが寝ているベッドのほかに小さめの本棚、その上にミニコンポが置いてある。あとはおれの目の前にあるテーブルだけ。壁の一面はクローゼットか、押入れになっている。意外にも極めてシンプルで、余計なものが何もない。ごちゃごちゃのおれの部屋に比べると、かっこいいという感想が浮かんでくる。
 化粧品とか、ぬいぐるみとか、おれの貧しい発想で思いつく「女の子らしい」ものは全く見当たらない。

「あの、恥ずかしいからあんまりきょきょろしないでください・・・・」
 ユカが沈黙を破った。布団で顔の下半分を隠したままこっちを見ている。
「おお、すまん。だ、大丈夫か?」
「うん。たいしたことない」とユカは言ったが、その声は鼻声で、鼻をすする音も聞こえた。
「調子悪そうだな。おれがいるとゆっくり休めないんじゃないか」
「そんなことない、そんなこと全然ないよ。私の方こそごめんね。今日一日、無駄にしちゃって――」
 また鼻をすすった。テーブルに置いてあるティッシュを渡すと、「ありがとう」と言って受け取り、思いっきり鼻をかんだ。

「相変わらず、ハナをかむのは豪快だねえ。部屋の外までよく聞こえるよ」
 ケイコが戻ってきた。にわかに部屋の中が騒々しくなる。この方がおれにとってはありがたい。
 器用なことにケイコの右手には水の入った洗面器、左手には大きなトレイが握られ、コーヒーやジュースやお菓子などが山盛りに積まれていた。それらをテーブルに置くと、ユカを少し起こしてジュースを飲ませた。それからユカの額や頬をベタベタ触り、「熱が上がってきてる」と言って、すぐにまた寝かせ、トレイの隅に丸めてあった濡れタオルを額にのせる。ユカはケイコにされるがままだ。

「風邪薬が見あたらないんだけど、どこかにやった?」布団をかけてやりながら、ケイコが訊いた。
「あ、切らしてるかも・・・・お兄ちゃんが先週まで大風邪引いてたから」
「わかった。あとで買ってくるね。痛み止めもあったほうがいい?」
 再度ケイコが訊くと、ユカは小声で「・・・・一応」と言って、また布団を顔が半分隠れるくらい引き上げた。

 一通り世話を終えたらしく、今度はおれに「はい」とコーヒーを差し出した。
「今日はお疲れさん」と言いながらケイコも座ってコーヒーをすすり出す。
「さっきもユキノに言ったんだけどさ、調子悪いなら迷惑だから、おれはさっさと帰った方がいいかなって思うんだけど」
 こういう話はケイコの方がしやすい。割と合理的に判断してくれそうだし、ユカの面倒はケイコがみてくれるから、おれが帰っても何の問題もないはずだ。
「そうなの? それでユカはなんて答えたの?」
 ケイコはおれにではなく、ユカに訊いた。
 ユカは何も言わず、半分隠れた顔のまま首を左右に振った。それを見てケイコは吹き出しながら、ユカの頭を撫でた。
 ユカはからかわれて怒ったのか、「もう」と言って布団の中に完全に顔を隠してしまった。
「平気平気。あんたがいいなら、居てやってよ。別にこの後用事があるわけでもないでしょ?」
 そりゃあ用事はないさ。本来なら今頃はディズニーランドで遊んでたはずなんだから。
「でも、ほら、ユキノ寝こんでるし、気遣わせちゃってるみたいだし・・・・」
「あはは――ほらユカ、あんたがよそよそしいから居心地悪いってさ――大丈夫だよ。ユカはね、恥ずかしがってるだけだから。イワイにあれ、見られちゃって」
「見られたって、何を?」

 おれの問いに、ケイコはジェスチャーで答えた。左手を胸に当て、右手を手の平を上にして、口の前に置く。そしてオエッと吐く真似をした。

「そ、そうなのか? そんなの全然気にしないけど」
「ほら、イワイくんは全然平気だってさ。ちゃんと顔出しなさい」
 ケイコはユカの上にかかっている布団を強引に引き摺り下ろし、顔を露にした。
 ユカはびっくりして布団を引き上げようとしたが、ケイコががっちり押さえてしまってびくともしないので、仕舞いには観念したようだった。
 ケイコは満足したように「よしよし」とユカの頭を撫で、ずり落ちてしまったタオルを洗面器の水に漬け、絞ってからまた額にのせてやった。ユカの顔は真っ赤だった。

(第25話につづく)




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