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「白い彼女」
第八章 ケイコ、その二(27~29話)

白い彼女 第27話

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第八章 ケイコ、その二
第27話

 もうこのまま、おれは死んでしまうんじゃないか、と思うほどの最低な頭痛と吐き気で、目が覚めた。
 窓から入ってくる日差しが目を焼き、その痛みがまた眉間から脳天へと突き抜けていく。日光に弱いなんて、ドラキュラになった気分だ。こうも気持ち悪くては起き上がる気にもなれない。また寝てしまおう。

 目を閉じたが、光は容赦なく瞼を通して眼球を刺激する。そうか、窓の方を向いて寝ているから眩しいんだ。反対側を向けばいくらか楽になるだろう。

 寝返りを打った。予想通り眩しくなくなった。これで一眠りできそうだ。
 薄目を開けると、目の前に枕がある。いつのまにかずり落ちていたらしい。枕に頭を乗せれば、この不快感も和らぐかもしれないと思い、ごそごそと動いて、枕に頭を埋める。案の定楽になった。このまま頭痛が治まるまで寝ていよう・・・・。

 ・・・・。
 ・・・・・・・・。
 なんだ、これは。鬱陶しい。

 顔にさらさらとしたものがあたる。細くて柔らかい、そう、毛のようなものだ。
 息をする度に、鼻や口に吸い込みそうになる。先端が顔を撫でるとくすぐったい。
 どうも邪魔なのでどかそうとすると、手が何かにぶつかった。
 何やら暖かくて、大きなものが自分のすぐ横に寝そべっている。

 まさか、と思い、両目を開く。目に入ったのは、細く、長く、滑らかな、金色に染め上げられた髪。その髪の奥に、さらに何かが見える。
 恐る恐るその髪を掻き分けてみると、目、鼻、口が出てきた。それらは自分が良く知っている人物、ケイコの形をしていた。

 ケイコは静かな寝息をたてている。その寝顔は不自然なほど幼く見えた。普段の少しオヤジの入った、威圧感溢れるキャラが嘘のようだ。
 などと見とれている場合ではない。これは、たぶん異常な事態だ。だが何故こんなことになっているのか、ここでおれとケイコが何をしたのか、記憶に靄がかかってしまったように、うまく思い出せない。

 起き上がると強烈な痛みが頭を包み込み、くじけそうになるが、そんなことを気にしている場合ではないことくらいわかる。
 周囲を見て、自分が知らない部屋にいることに気づく。

 やけに寒い、と思ったら、おれはパンツ一枚まとっていない。だが、靴下だけは履いている。傍から見ればなんとも情けない姿だ。
 もしやと思い、目の前で寝ているケイコの体を覆っている毛布をゆっくりとめくったら、やっぱりケイコも裸だった。慌てて毛布をかけなおした。

 とにかく、このままでは何もできない。服を探すと、ベッドの隅にケイコの下着と一緒に丸まっているおれのトランクスを発見した。ダイブするように飛びついてトランクスを鷲掴みにする。ベッドが大きく軋んだ。

「うー、頭痛い」ケイコが今の振動で目覚めたようだ。
 しくじったかもしれない。このままケイコを寝かせておいて、気づかれないうちに帰ってしまうという手があったかもしれない。でもケイコは既に毛布の中でもぞもぞと動き始めている。
 こうなったら観念するしかない。トランクスをはき終え、他の服を捜しながらケイコに呼びかける。
「おい、そろそろ、起きたほうが」
「えー? 面倒くさいなあ――あんた、誰よ?」
「誰って、おれ、だけど」
「・・・・!」

 ケイコはがばっと顔を起こし、辺りを見回した。
 おれを見つけると、一瞬動きを止め、そのあと勢いよく毛布の中に隠れた。
 そのまま毛布の塊と化したケイコはベッドの上を這い回り、右手だけをぬっと出して、何かを手探りで捜し始めた。仕方ないので、おれは自分のトランクスと一緒に丸まっていた下着をその手に渡してやる。ケイコはさっきのおれのように、下着を鷲掴みにすると、一気に毛布の中に引き込んだ。

 しばらくの間、二人は一言も発さずに、駆け回るように必死になって服を着る。その物音と荒い息遣いが空しく響くなか、時折ケイコの鼻をすする音が混ざった。風邪をひいたのか、それとも泣きそうなのか、確認するのが怖い。

 ようやく二人とも昨日と同じ格好に戻った。走り回ったあとは、虚脱感で動けなくなる。二人ともうなだれて床に座り込んでしまった。

「あの、ここって・・・・」恐る恐る訊いてみると、ケイコは俯いたままで即答した。
「あたしの家。もしかして、覚えてないの?」
「うん。ごめん」
「謝んないでよ。実は、あたしもよく覚えてないんだよね・・・・」
 ケイコは煙草に火を点して、深呼吸するように大きく煙を吐き出した。おれだけではなく、ケイコも覚えてないということは、幾分かおれの気分を楽にしてくれた。
「でもね、だんだん、こうして気分を落ち着けていると、思い出しちゃうのよね、いつも・・・・」
 恐ろしいことを言う。だがそれは当たっている。おれも思い出そうとすれば、出来そうな気がしている。きちんと思い出して、ケイコと事実を確認するべきなんだろうか。

 時計を見ると、午前十時を過ぎている。今日はクリスマスイヴのはずだ。
 帰った方がいい。いや、帰りたい。そうだ、思い出すのは後でいい。というか、この状況を見れば嫌でも想像はつく。やばいに決まってる。
「おれ、帰るよ。そのほうが、いいと思う」
 立ち上がろうとすると、ケイコが止めた。
「慌てなくてもいいでしょ。コーヒーくらい出すよ。それとも冷たいものがいい?」
「・・・・コーヒーで」
「じゃあ、こっち来てくれる?」
 言われるままにケイコについていくと、ダイニングに通された。

 キッチンのカウンターにくっつけるように四人掛けのテーブルが置いてある。おれをそこに座らせ、ケイコはキッチンに入った。
 距離が近いので、ケイコの仕草が良く見える。無表情で、淡々とお茶の準備を進めている。とても幼く見えた寝顔の面影は、そこには見出せなかった。
 しばらくして、ケイコはコーヒーを二つ、他にウーロン茶のペットボトルも持ってきた。礼を言ってコーヒーをすすると、ケイコは対面に座っておれをじっと見つめた。

 気まずくなって、窓の外を眺める。外はよく晴れて、家々の屋根が陽光を反射してキラキラ輝いているのが下の方に見えた。
「ここ、マンションなんだ。何階?」
 なにげに尋ねると、ケイコは苦笑して、「八階。昨日も同じこと訊いたね。正確には今日か。ここに着いたのだいたい二時頃だったから」と答える。
「家の人は? お母さんとか、留守?」
「ほんとに、覚えてないんだ」今度は声を出して笑い始めた。
「あれ、これも訊いた?」
 ケイコは頷いた。「お母さんは仕事。泊まりで、帰りは夕方だよ」
 そう言われれば、同じようなことを聞いたような気もする。

「飲みすぎだね。ま、あたしが飲ませちゃったんだから、あたしが悪いよね」
「・・・・ケイコは、よく覚えてるんだな。さっきは覚えてないみたいなこと言ってたのに」
「ていうか、もう思い出しちゃった。全部」
 ケイコの顔が、ほんの僅かに赤らんだように見えた。それをごまかすためか、自分で自分の頬を両手でつまんで引っ張って変な顔をして見せたりしている。
 もう自分でも殆どわかっていることだが、意を決して確認することにした。ケイコが思い出した以上、おれだけが知らないというのも不安なものだ。

「あの、おれも思い出しつつあるんだけど、やっぱり、おれ達って・・・・」
 ケイコは変な顔のまま、頷いた。
「そ、そうか。それは――」
 何と言えばいいだろう。ごめん、なんて言ったら殴られるだろうか。
「気にしないでいいよ。お互い、酔ったうえでのことなんだし、気にされるとこっちも困るよ」
「そ、そうなのか」
 ケイコに慰められているような自分が情けなくてしょうがない。ケイコだって動揺してるんじゃないのか。昨日一緒に飲んで、そのまま酔っ払った勢いでやってしまうなんて。 それとも、そういうのが平気なコなんだろうか。

「もうすぐお昼だし、なんか作るから食べてってよ」
 ケイコは立ち上がるとキッチンに向かおうとする。
「いや、そんな、悪いよ。それにあんまり長居しない方が――」
「お願いだから食べてってよ。お昼まで居てくれたら、それで忘れるから」

(第28話につづく)




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