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「白い彼女」
第九章 白い彼女(30~34話)

白い彼女 第32話

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第32話

 あの時のユカが再び目の前にいる。あの時と違うのは、ユカは「おれの部屋」にいるということだ。出て行けと言われてもこの部屋からは出られない。

「ユカ・・・・」
「イワイくん・・・・」
 恐る恐る呼びかけてみると、ユカはちゃんと返事をしてくれた。ただ、今にも泣きそうなのはあの時と一緒だ。

「あの時は、悪かったと思ってるよ」
「・・・・そう思うなら、なんであんなことしたの?」
「いや、それは・・・・その、ケイコが・・・・」
「ケイコのせいなの?」
「いや、そうじゃなくて・・・・」
「じゃあ、イワイくんが悪いの?」
「なんていうか・・・・」
「悪くないって思ってるの?」
「だから、悪かったって言ってんじゃん!」
 ユカらしくない、容赦の無い問い詰めに、つい語気が荒くなる。冷静に話したいのだが、うまく流れを作れない。この場の主導権はユカにある。

 あの最後の時もそうだった。短い時間だったが、完全にユカのペースだった。
 いつも少し控えめで、おれに逆らうこともなく従ってきたユカ。それが、最後の最後になって言うことを聞かなくなった。
 思えばその前日、ユカが嘘をつき、おれがユカの過去を知っていることを突き止めたときから兆しがあったのかもしれない。ユカの変化に気づかなかったのは迂闊だったとしか言いようがない。もし気づいていたら、ユカと付き合ったりなんかしなかったかもしれない。変わってしまったユカ、おれについてこないユカは、既におれにとってユカではない。

「なんで、あんなことしたの」
 ユカは質問を繰り返した。なんでって言われても、なんとなく、としか答えようがない。仮にそう答えたとして、納得してもらえるとも思えない。従って黙るしかない。
 しびれをきらしたのか、ユカは質問を変えた。
「・・・・ケイコのこと、好きだったの?」
 それは、全く思いがけない質問だった。ケイコを好きなのか、考えたこともないような気がする。

 好きかどうか、わからない。
 では、ユカはどうだろう。おれはユカを好きだと思っているのか。

 改めてユカを見る。ユカもおれを見ている。返事を待っているのだ。
 目の前のユカ、そしてユカとの思い出が次々と浮かんでくる。少し大人びた雰囲気を持ちながら、おれの前ではおどおどするユカ、ケイコに甘えるユカ、はしゃぐユカ、男を避けるユカ、映画を見るユカ、痴漢に抵抗するユカ。

 いろいろ思い出しているうちに、下腹部がムズムズしてくるのが感じられた。ユカを脳裏に描いて、何回か、何十回か射精した。夢精したこともある。それもおれにとってはユカの思い出の一つだった。ケイコをオカズにしたことは一回もない。
 ユカを好きだったかどうか、わからない。
 ただはっきりしているのは、おれはユカに触りたかった。初めて、あの電車の中で痴漢にいじられている姿を見てから、ずっとそう思い続けていたのかもしれない。おれが触ったときユカはどう感じるだろう、おれが見たときユカはどう動くだろう。それが知りたかった。
 でもできなかった。できないこともわかっていた。

「ケイコは・・・・たぶん好きというのとは違う気がする」
「好きでもないのに、したの?」
「ケイコは・・・・嫌がらなかった」
「嫌がらなければ、何してもいいの?」
「むしろ、ケイコは積極的だったんだ」
「やめて!」
 ユカは両手で耳を塞いだ。だが、おれは言わずにはおれない。ユカの手首を掴み、耳から引き剥がした。
「ケイコは優しかったんだ。自分から抱きついてきてくれて。おれだけのせいじゃない。ケイコだって、お前だって同罪じゃないか」
「私のせいだって言うの? 私がいけなかったの?」
「お前にはこういうこと、できないだろ」
 ユカの胸をぎゅっと掴む。妙な感触だった。
 ユカは小さい悲鳴をあげて、おれの腕を振り払いうずくまった。
「お前が、お前がさせてくれてれば、あんなことにはならなかったんだ」
 肩を掴み、無理矢理ユカを起こそうとする。ユカは必死に抵抗した。全身が大きく震えていた。
「どうした、ちゃんとこっち向けよ。話の途中だろう」
 ユカはゆっくりとおれの方を向く。固く結ばれた口に、涙で溺れそうになりながらも、大きく開かれた瞳。その視線がおれの目に刺さった途端、背筋に冷たいものが走った。

 この目、いつかどこかで見たことがある。そうだ、最後に見たケイコの目だ。いや、あの時の母親の目だ。いつもいつも、こんな目でおれを見ていた。

 この目で睨まれると、おれは小さくなってしまう。全てが否定されるような恐怖で動けなくなってしまう。だから嫌だった。逃げたかった。動くには力が必要だった。逃げるには勢いが必要だった。
 おれは必死にその力を得ようとした。力が欲しい、力が欲しい、何度も何度も唱えた。

 そのうち、それは現れた。
 どす黒くて熱い塊が体の中心から四肢の隅々まで浸み込んでいき、やがて高熱で耐えられなくなる。その苦痛が恐怖を覆い隠し、自分が自分から解放される。
 何の束縛もない、真の自由が得られる一瞬だった。

 一度体験した後は、それは簡単に現れるようになった。
 そして今も、全身が黒く熱く燃え、臨界に達しようとしている。
「な・・・・」
 声が出た。もう大丈夫だ。

「なんだその目は!」
 思い切りユカの頬を張り飛ばす。勢いでユカはベッドに倒れこんでしまう。
 パジャマの襟を両手で掴み、左右に引っ張る。
 ユカは「やめて」と叫びながらもがいた。面倒なのでもう一発殴ると、いくぶんおとなしくなった。
 改めて両手に力をこめて、パジャマを引き剥がした。ぶちぶちと鈍い音をたてて、ボタンが弾ける。

「・・・・?」
 そこに見えたものが、何であるかわからなかった。
 いや、正確には、何もなかった。
 ユカの首から下には、下着も胸も、乳首も、へそもない。それどころか体そのものがなかった。
 首から上を見る。そこには顔を腫らしたユカがべそをかいている。
「なんだ、これは?」

 突然ベッドの下からひーひっひと甲高い笑い声が鳴り響いた。
 慌ててベッドから飛び降り、下を覗くと、「彼女」が腹を抱えて笑っている。彼女の胸ぐらを掴み、強引にベッドの下から引きずり出す。

「説明しろ! どうなってる」
 彼女は笑いを抑えることができず、途切れ途切れに答える。
「だって・・・・だって、だって。経験ないから・・・・イサム、イサムはユカの・・・・ハダカも、セックスも見たことないから・・・・ひゃひひひ・・・・カ、カラダは記憶にないもの」
 爆発的な衝動が全身の毛穴から突き抜けるようにほとばしり、勝手に拳が彼女めがけて飛んでいった。
 当たる寸前、全てが真っ暗になって何もわからなくなった。

(第33話につづく)




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