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「白い彼女」
第九章 白い彼女(30~34話)

白い彼女 第34話

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第34話

「彼女」は時間をくれた。機会と言った方が適当かもしれない。

 失っている記憶――
 彼女曰く、これまで何度も思い出しては後悔し、逃げ、また忘れることを繰り返してきたそうだ。一度何かを思い出してしまうと、それを契機にあらゆることを思い出し易くなってしまう。完全に忘れるためには以前より『深いところ』に来なければならないそうだ。従って思い出しと忘却を繰り返す毎に、段々と深く深く潜り、とうとう底についてしまった。それが、この部屋だ。

 今度思い出すと、どんなに後悔しても、もう完全に忘れられる保証はないということだ。
 自分がしたこと、体験したことが自分自身に刻まれている、それが記憶。
 結果は変えられない。消したくても消えない。記憶から逃げる手段はただひとつ「忘れる」だけ。
 そしておれは今、ここに来る直前の、最近の記憶を忘れている。つまり、逃げてきたということらしい。逃げたのにはおそらく理由がある。それが何かはわからないが、想像はつく。とても辛いとか、なにか嫌な思いをしたか、もしくはとんでもないことをしでかしたか、だ。

 でもおれは今、心から望んでいる。
 思い出したい。
 また後悔して、逃げ出したくなるかもしれない。正直言って怖い。
 でも「彼女」は言った。おれは変わりたがっていたと。それに賭けてみたい。

 ここでは変われない。
 ここでは新しい記憶が生まれない。何も生まれない。ただ、過去がぐるぐる回っているだけだ。終わったことだけだ。おれは今、止まっているのだろう。

 きっと、まだ終わっていないことが、忘れている記憶の中にはある。
 変わるためには動かなければならない。動くためには思い出さなければならない。おれがおれとして、前に進む、それがおれの望みだと思う。ここに留まることじゃない。


 了解。じゃあ、行くね。

 彼女の声だ。耳から入る音ではなく、頭の中で響くようだった。その声は穏やかで、おれを安心させてくれる。

 やがて目の前が真っ暗になり、何も見えなくなった。
 瞼を閉じても開いても何の区別もつかない。次第に体中の感覚が曖昧になっていく。
 今自分が立っているのか、寝ているのか、どこが手か、足か。意識だけははっきりしていて、まるで自分が魂だけの存在になったような気分だ。

「お前には感謝しているよ。憎ったらしいところもあるけど。お前と一緒にここにいても、きっと楽しいんだと思うけど、向こうには大事な人が待っているかもしれないんだ。ごめんな」
 彼女に届くのかわからず、ことさら声に出してみた。本当に声になっているのかも、最早自分では認識できないが。

 くすっ・・・・。
 彼女の笑い声。
 そろそろ聞こえてくるよ。

 彼女の言葉通り、音が聞こえてきた。いつも聞こえていた上からの声だと、すぐに理解できた。その声はゆっくりではあるが、確実に大きく、鮮明になってきている。

 もうすぐ、全部思い出すよ。
「思い出しちゃったら、もう忘れられなくなるんだよな?」
 さっきは言わなかったけど、方法がないわけではないよ。
「・・・・なんとなく想像つくな。でも言ってみてよ」
 それは、無になること。イサムが消えること。
「やっぱり。それって、死ぬってことか?」
 そうとも言えるし、違うとも言える。
「そうか・・・・。なあ、声がだんだん聞き取りにくくなっているけど、やっぱりお前って消えちゃうのか?」
 私は消えない。ずっと前からイサムのことを見ていたし、これからもそばで見てる。
「・・・・なあ、今気づいたんだけど」
 なあに?
「お前、おれの望みをかなえてくれるために、本当に望んでいるものを持ってきてくれるために現れたんだろ」
 そうね。
「思うんだ。おれって、本当はお前に会うためにここに来たんじゃないかって」
 あらあら。じゃあいま、後悔してる?
「してない。だって消えないんだろ?」
 消えはしないけど、もう会えないかもよ。
「会いたいけど、実は会ってはいけない人でもあるような気がするんだ。だから、これからもそばで見てくれるってことがわかったからいい」
 そう・・・・。

「・・・・なあ、お前の名前、考えたんだ。もし今度会えたら、その名前で呼んでいいか?」
 なんて?
「イサコ」
 ・・・・ださすぎだけど、了解。

 ばいばい、イサコ。

(第九章終了・次回(35話)より第十章)




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