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「白い彼女」
第十章 ハルミ、その二(35~41話)

白い彼女 第38話

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第38話

 会社を出て四十分程でアパートに着く。古い1DKだが、駅からも近く交通の利便性が良いため家賃は安くない。しかも最近車を買って、駐車場も借りたからあまり生活に余裕はない。

 途中立ち寄ったコンビニで買ったビールとウーロン茶を冷蔵庫に放り込み、宅配ピザ屋に電話して、四種類のピザを一枚に組み合わせたやつのLサイズを注文する。ハルミがここに来るときは大抵そうしている。
 おれは自炊は全くしないし、ハルミは料理は普通に作れるが、あまり好きではないらしい。それに今日は大事な話になるだろうから、作っている時間がもったいない。

 少しだけ部屋を片付けて、することがなくなったのでベッドに寝転がってハルミが来るのを待つ。
 天井にはハルミが買ってくれた蛍光灯がぶら下がっている。
 引越して来た時、ここには前の住人が残していった電灯がそのまま取り付けられていた。古くて笠がひび割れていたが、特に生活に支障がないのでそのまま使っていた。
 ハルミが初めてここに来た時、それを見て貧乏臭いから買い換えようと言った。でもおれは別に気にならないし、壊れるまではこのままでいいと断わった。そうしたら、先月ハルミが新しい照明器具を買ってきて、勝手に交換してしまった。
 余計なことを、と半分思ったが、まあダタでくれたんだし、一応礼を言って済ませた。

 そういえば、この電灯を取り付けた後、ハルミは打ち明けたんだっけ。
 離婚を考えている、と。

 それを聞いた時、おれは別に嬉しくなかった。むしろ重圧を感じるというのが本音だった。ダンナと別れて欲しいなんて頼んだこともない。そういう要求も期待も現時点ではおれの中に存在しない。ハルミが独りで突っ走っていると思うと興醒めしてしまうだけだった。

 だが、おれの予想は外れた。ハルミは離婚したら一緒になってくれ、とは言わなかった。離婚はかなり前から考えていたことで、おれの存在を考慮してのものではないらしい。
 原因はダンナとの不仲だった。夫婦間はすっかり冷め切ってしまい、家に居てもただ苦痛なだけだ、そう言ってハルミは泣いた。初めて見る涙だった。

 ハルミが結婚したのは今からだいたい一年と四ヵ月前、相手は大学時代の同級生。
 二人は長く付き合っていたわけではなく、同窓会で再会してから親しくなったそうだ。もっとも、ハルミの方は学生時代から片想いだったらしい。だが、今でも男の事になると酒の力を借りなければ何もできない彼女が、学生当時想いを打ち明けることなどできるはずがなかった。しかも相手の男はそこそこモテオだったらしく、いつも周囲には女友達がいて近づくこともままならなかったらしい。

 そして同窓会、たまたま席が近かったのか、話す機会を得てハルミは舞い上がり、昔の恋心に再び火が点いたというわけだ。
 二人はその夜デキてしまった。それが初めての経験だったと、随分余計なことまでおれに教えてくれた。
 ついでに、子どもも出来た。
 つまり二人はできちゃった結婚だ。

 一度決断したハルミは行動力がある。相手の男のところに押し掛けて行って、あっという間に結婚。電撃という言葉にふさわしい早さだった。
 きちんとした結婚式や披露宴などは行なわず、お互いの親しい友人だけ、つまり大学関係の人だけを集めた小さなパーティだけで済ませ、入籍した。それがおととしの十一月だった。
 まあここまでは良かった。大変なのは、その後だ。

 その年の末、ハルミは流産してしまった。
 詳しく聞けなかったが、特にハルミが何かしたとか、落ち度があったとか、そういうことではなく、誰にもどうすることもできなかったみたいだ。しかし彼女は自分を責め、どん底まで落ち込んだ。
 正月から会社を半月休み、その後別人のようにやつれ果てた姿で現れた理由を、この時初めて知った。

 その後ハルミは次第に快復していったのだが、ダンナの態度が変わったらしい。
 急に冷たくなり、怒りっぽくなった。子どものことでも随分責められたそうだ。
 何度か暴力も受けたらしい。
 ハルミはそれでももう一度子どもをつくりたいと願い、必死になって尽くそうとしたが、ダンナからは無視されるだけの毎日が続いていた。

 そんな折、花見があっておれと飲んで、ハルミ曰く生まれて初めて――これは多分に誇張されていると思うのだが――カワイイと言われた、女として褒められた、のだそうだ。
 おれはからかい半分で、褒めるとテレるのが面白かっただけなのだが、彼女は心底嬉しかったらしい。つくづく調子に乗って考えなしに話す事の怖さを思い知った。

     *

 天井にぶら下がっている蛍光灯を眺めながら、あの時のハルミを思い出していた。
 話を聞きながら、さすがに可哀相だと思った。

 でもダンナの気持ちもわかるような気はしている。
 もともとハルミとは遊びであって、結婚するつもりなどなかったのだろう。恋人として付き合う気があったかも怪しいところだ。
 ところが子どもができてしまって、仕方なく結婚を承知した。ハルミのことだから結構強引に迫ったんじゃないだろうか。子どもという切り札もあることだし、責任を問われると、彼は断われなかった。

 で、いざ結婚したら流産した。彼にしてみれば「話が違う」と思ったのではないのか。
 彼にとっての結婚する原因も、夫婦で居続ける理由も根拠も失われてしまった時点で、まったくやる気を失ってしまったわけだ。
 もちろん流産したことにハルミには何の責任もない。むしろ辛いのはハルミの方だろう。その点ダンナは冷たい、とも思う。暴力を振るうのはもっといただけない。

 この話を聞いてから一ヵ月くらい経つ。ダンナとは今どうなっているのだろうか。
 どうしておれにそんなことを打ち明けたのだろうか。花見の後みたいに、おれからプロポーズでもされるのをじっと待つつもりなのだろうか。真意は不明のままだ。

 インターホンが鳴った。ハルミだと思ったら、ピザが先に着いた。玄関で勘定をしていると、店員の肩越しにハルミの立っている姿を見た。

(第39話につづく)




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