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「白い彼女」
第十章 ハルミ、その二(35~41話)

白い彼女 第39話・前編

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第39話・前編

 ちりっ。
 ん?
 ちりちりっ。
 なんだ? 
 耳の奥で火花がはじけたような音がする。
 火花がはじける瞬間、目の前の風景が歪む。その歪みがどんどん大きくなっていく。
 とうとう何が見えているのかわからなくなった。上下の感覚も喪失した。
 暗転した。

「・・・・む」
 うん?
「・・・・む、・・・・どうし・・・・の?」
 何が聞こえるんだ?

「イサム、イサムってば」
「あ・・・・ハルミだ」
 ハルミが心配そうな顔でおれの体を揺すっている。おれは玄関で横たわってるようだ。
「どうしたの? 急に倒れちゃうからびっくりしたわ。どこか痛いの? 病気?」
「いや、大丈夫。ちょっと目眩がしただけだから。・・・・ここでどのくらい気失ってた?」
「ほんの少しだけ。十秒くらいかしら」
 そうか、それだけか。もっと長く寝ていたような気もするが。
 とにかく立ち上がると、足元にピザの入った紙の容器が転がっていた。幸い中身は飛び出していない。それを持って部屋に行く。ハルミも後をついてきた。

 少し気分が悪かったが、無理をしてピザを頬張り、ビールで流し込んだ。ハルミにもビールを勧めたが、今日はいい、と断わった。
 ハルミも帰り掛けに買い物をしてきたらしく、唐揚げやサラダなどの惣菜とケーキをテーブルに並べた。

 二人で何も喋らずにひたすら食べる。
 ハルミは女性としてはかなり大食いだ。なのに体は細く引き締まっている。二十六歳のおれが、そろそろたるみ始めた腹を気にしているのに、三十歳の彼女は今でも二十歳のときに買ったスカートを楽々と穿けるらしい。
 いくら食べても太らない体質で、ここ十年間でサイズが変わったところは胸だけだそうだ。大きくなったのか、その逆なのかは確かめていない。胸が大きくても小さくてもおれはあまり気にならない。ただ、細く長身な彼女には、今のやや小さめの胸の方がバランスが取れているというか、精悍な感じのシルエットで似合っていると思う。
「・・・・なにジロジロ見てんの?」ハルミが大きなピザを半分口に突っ込みながら睨んでいる。
 いかんいかん。どうも最近ハルミの体を眺めながらオヤジくさい論評をする癖がついてしまっている。

 食事を済ませて一休みした後、ようやく本題に入る。おれは今朝受け取ったメモを取り出し、ハルミに見せた。
「本当にバレたのか? 誰がおれ達のことを知っている?」
「実はまだその辺がよくわからないの。ただ、今朝イサムがまだ出勤してくる前に、部長にこっそり呼ばれて『君達のことに関する妙な噂が書かれたFAXが今さっき届いた』って言われたの」
 どうも事態はあまり軽くないらしい。外部からの噂というのが一番厄介だ。
「部長は他に何か言ったの?」
「ううん、それだけ。あとは『ま、そういうことだからよろしくね』だって」
 部長は事なかれ主義だし、波風を極端に嫌う人だ。自分から揉め事に首を突っ込むようなことはしないだろう。穏便に事が運ぶうちは、無用に噂を広めるような真似をするとは思えない。

「今日、どうだった? 何か気づいた?」今度はハルミが訊いてくる。
「何かって何が?」
「他の人たちの様子で、気になったこととか」
「うーん、いつもと変わった様子はなかったような気がするけど。ハルミは?」
「私も。別に変なことはなかったし、雰囲気もいつもと一緒だったと思う」
「まだ、社員には知られていないってか」
「そう判断するのは早いと思うけど、実際あまり気にする必要はないかもしれないわ。君にメモを渡したのは念のため。だいたい部長の話もずいぶんと曖昧だし」
「曖昧って?」
「『君達のことに関する妙な噂が書かれたFAXが今さっき届いた』って言ってたわ。まずこの場合、『君達』が誰を指すか」
「おれとハルミ。ハルミとおれは仕事もペアだし、そう考えるのが普通だろ」
「社内ではね。でももう一つ可能性があるの」
「誰?」
「私とダンナ」
「なんで部長がハルミの家庭のことに口を出すんだよ」
「部長は私達の媒酌人なのよ。一応形は、だけどね」

 初耳だった。媒酌人って、夫側の上司とかに依頼するのが普通だと思っていた。ハルミがあの部長にお願いしたのだろうか。それもあまり想像できない。
「部長は私とダンナの共通の知り合いなの。同じ大学出身なのよ。それにダンナにとって部長はサークルのOBで、在学中から既に面識があったの」
 世間は狭いとは良く言ったものだ。それではおれのことが部長にバレるのは余計に深刻な問題だということじゃないか。

「それから、『妙な噂』ね、これは具体的な内容を言わなかったわ」
「初めの『君達』が誰を指すかによって、内容が変わってくるということか」
 おれとハルミを指せば、無論おれ達の不倫のこと。ハルミとダンナを指せば不仲のことか、離婚の危機ということになる。
「そうなるわね。あとは、そもそもFAXが――」
「誰からのものか、だな。そのFAXを実際に見たの?」
「いいえ、見せてくれなかったわ。見せないことで部長はわざと曖昧にしたのではないかしら。『君、ボクが何を言っているかわかってるね』って。でもそういう話し方をしたということは、まだ噂は広まっていない、少なくとも部長はそう判断しているからだと思うわ。だから私だけに、今のうちになんとかしなさいって警告した」
「かもしれないけど、外からのFAXだろう。どういう方法で噂を広げられるかわかったもんじゃないよ」
「それはそうなんだけど・・・・」
「誰から送られたのか、それがわかればなあ・・・・」
「わかったらどうする? その人のところに行って口止めするの?」
「いや、なんて言うか、まだそこまで考えてないけど、相手が不明のままって気味が悪いじゃないか。それに誰だか判明すれば、何か策を思いつくかもしれないだろう」
「そうかもしれないわね・・・・」

 ハルミは黙ってしまった。言葉を尽くしたというより、何か言いあぐねている様子だ。チラチラとおれの方を見ているのに、目が合いそうになると慌てて顔を背けた。
「なんだ?」
「なんだって、なに?」
「何か言いたげじゃないか。言いたいことがあったら言えよ」
「言いたいっていうか、考えに確信が持てないというか・・・・」
「まさか、FAXの送り主に心当たりがあるとか」
「うん。実は一つ可能性があるの」
「誰?」
「タケシ」
「タケシって誰?」
「私の夫」
「なん――」なんだ、それは。驚きのあまり大声を出しそうになるのをこらえた。

(第39話・後編につづく)




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