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「白い彼女」
第十章 ハルミ、その二(35~41話)

白い彼女 第40話

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第40話

 それは、予想していたよりも遥かにストレスの溜まる毎日だった。
 当面の間、ハルミとの付き合いを自粛する。これについて異論はない。
 もともと周囲にバレないように気を遣っていたのだから、職場での過ごし方に大きな変化はないはずだと気楽に考えていた。そして実際、数日のうちはいつもと同じように過ごせた。
 だが、一週間ほど経過して、次第にいらつくようになってきた。

 ハルミは平然と他人面を保っている。打ち合わせや業務連絡以外の会話は一切なく、万が一のことも考慮して、パソコンは勿論、携帯へのメールも禁止した。
 多少大げさだと思わなくもないが、彼女の性格を考えるとそこまで配慮することも理解はできる。

 問題なのは、あまりにも徹底して距離を置いたため、毎日目前に姿を見、一緒に仕事をしていながら、なんの情報交換もできないことにあった。
 ハルミの推理が正しければ、まだおれ達のことは誰にも知られていない。だが、推理が間違っていることも考えられる。無意識のうちにおれに向けられている不自然な視線はないか見回したり、遠くでこそこそ話している社員がいれば必死に耳を澄まし、会話の内容を拾おうとしてしまう。一日中、心の休まる時間がもてない。

 最も緊張するのは部長の呼び出しだ。おれだけ、あるいはハルミだけ呼ばれることはあっても、今のところ二人揃って呼ばれたことはない。
 おれが呼ばれた時は、幸い仕事に関する連絡や報告のみだった。だがハルミはどうだろう。また怪FAXが届いたとか、何か警告されたりしていないのだろうか。気になるが、確認できない。「どうだった?」と訊いてもハルミは「別に」と短く答えるだけだった。
 おれはハルミに毎日気になったことを伝えたいし、ハルミの周囲で何が起きたかも教えてほしい。一体今、どうなっているのか、この状況をいつまで続けるのか、それだけでも相談したいという気持ちが日増しに強くなっていった。

 しかし、迂闊に行動するのは危険だった。ハルミの言ったとおり、おれの存在がまだ誰にもバレていないとしても、少なくともハルミが部長から監視されていることは確かだ。どこで見られているかわかったものではない。そう思うと八方塞がりで何一つ動けない心境になってしまう。

 ひたすら緊張と消耗の日々が十日ほど続き、とうとう我慢できなくなって一回、「話がしたい」とメールを出したら、「ダメ」と短い返事をもらって、あとは無視されてしまった。
 無理だとしても、もう少し気の利いた返事をもらえると思っていたから、かなりショックだった。

 そこまで徹底して演技できるものなのか、それとも他人面をしているうちに、本当に気持ちが冷めてしまったのだろうか。そんな疑念が頭をもたげ始めた。
 だいたいダンナとは別居中なんだし、夜に電話するくらい構わないじゃないか。
 やはり今回のことをきっかけに、おれと別れようとしているのではないか――思考がどんどんマイナス方向に偏り、夜中も不安で眠れなくなった。
 仕方なく毎晩酒を飲み、寝不足と二日酔いで昼間は余計にイライラするようになった。

 月曜日の朝突然、ハルミとおれ、二人同時に部長に呼び出された。あれから二週間経っている。
 明後日から二人で行く予定だった出張を、ハルミ一人だけにしろと言ってきた。出張の代わりに、おれには明日から始まる研修会を受講しろというのだ。

 かなり微妙な指示だった。
 おれとハルミを引き離すためと考えることもできる。
 だが、研修は以前、おれが受講を希望したものでもあった。コンサルタント会社主催のプレゼンテーション研修で、希望者がいれば一名だけ受講していいという連絡が社内にまわった。希望したのはおれを含めて二名だけで、調整の結果、もう一人の方が受講することになった。
 ところが今日になって、そいつが急病で休み、どうやら明日からの研修にも行けそうにないということだ。いまさらキャンセルしても受講料は返還されないし、せっかくだから希望者だったおれが受講してはどうか、ということだった。
 研修はちょうど出張と日程が重なっている。おれの本音としては、できればハルミと出張したかった。出張先ならハルミと遠慮なく話ができるはずだ。

「別に私は構いません。今回の出張はどうしても二人必要というわけでもありませんし」
 ハルミは即答した。そのあまりにも落ち着いた態度が、おれの感情を逆撫でする。
 だがここは我慢して研修に行くしかなかった。
 断定はできないが、部長によるハルミとおれへの攻撃なのかもしれないのだ。とにかく尻尾を掴ませてはならない。

(第41話につづく)




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