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「白い彼女」
第十一章 四月一日(42~44話)

白い彼女 第42話

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第十一章 四月一日
第42話

 四月はすぐにやってきた。
 今年は例年にない暖冬で、表の桜はすでに満開に近い。それを知って日付の方が慌てて追いつこうとしたような早さだった。

 結局あれから一度もハルミとまともに話をしていない。
「打ち合わせしましょうか」とハルミが声をかけてきても、「引継ぎの件だったらメモを作りますので、それを読んでいただければ結構です」と言って断わってしまった。
 相変わらず夜もハルミから連絡はこない。おれも連絡しなかった。

 そのまま四月になってしまった。

 一日、出勤すると、まずはいつもと同じように開発部の席、ハルミの正面に座る。
 ハルミは先月も先々月もさらにその前もそうしてきたように、「清水運送」のカレンダーをめくり、いらなくなった三月の頁をハサミで切ってメモにしていた。

 やがて異動する社員のリストが社内に掲示される。異動予定者は各自でそれを確認してから、新しい配属先へと向う。
 ――総務部人事係。
 貼り出された辞令の、おれの名前の横にはそう書いてあった。
 今まで使っていたデスクから荷物を持って総務部へ向う。異動と言っても、同じフロア内での話だから、ほんの十数メートル座席の位置が変わるだけだった。

 総務部は経理、人事、庶務の三つの係からなっており、部長を含めて八名、うち女性は庶務に二名、全員が先輩だった。
 挨拶を済ませ、指定された席に着く。座ると、ハルミの席は後方に位置するので見えない。

 異動初日に大した仕事はない。部署の説明やら前任者からの引継ぎやら、とにかく人の話を聞くことばかりだ。
 入社してからこれまで、こうした説明は殆どハルミがしてくれた。時には優しく、時には厳しく。
 今こうして他の先輩からの説明を聞いてみて、改めてハルミの説明は理路整然としていてわかりやすかったことに気づく。
 もうハルミから仕事の説明はしてもらえない。打ち合わせも相談もできない。

 午後、新しいおれの席からチラッと後方を見ると、おれの後任で配属された新入社員にハルミが何かの説明をしているところだった。
 おれのいた席にはその新人が座っている。
 もう戻れない席。あそここそが自分の居場所だったという気がする。あそこまでほんの僅かな距離なのにとても遠く、まるで別世界のように見える。ほんの十数メートル動いただけで、こんなにも孤独を感じるものなのか。

 新人に話をしながら時折笑っているハルミ。もう随分と長い間あんな笑顔を見ていない。
 これから先、あの笑顔をおれに向けてくれる機会はあるのだろうか。おれはもう笑いのない場所に立っている気がする。二人は笑えないところに来てしまったのかもしれない、そんな思いでハルミを見ていると、その微笑を向けている新人に対して嫉妬さえ覚えてしまう。

 バレそうな秘密、それに加えて凶事ともいえる異動。それでもハルミは無関心で無反応だ。おれだけが独りで真剣に考えているように思える。二人の間には大きな隔たりが出来上がりつつあるのではないか。

 ――おれだけ損をするいわれはない。この状況下で、無理をしてでもハルミと付き合うことはない。
 二人の間に何の約束も交わされていない今なら、ゴタゴタも最小限で済むだろう。彼女も冷静な判断ができる女性だし、同じような結論に至っているのかもしれない。
 そう考えて、すぐに自らを否定した。

 そんなことはないはずだ。
 今の状況は周囲への対抗策のはずだ。しかもこの策を提案したのはハルミだ。その提案通り忠実に振舞っている相手に対して、言い出した方が一方的に裏切るなんて、少なくともハルミはそういう人間ではない。
 そう信じたい。いや信じている。つもりだ。

 ただ、今は一言でいいから直に声が聞きたい。
「信じて」と。
「愛してる」でもいいけど。

(第43話につづく)




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